立地基準の確認

処理施設設置計画地について、都市計画法上の区域や用途地域、地目が確認できたら、次はその予定地の周辺状況やインフラの整備状況について確認いたします。計画地を管轄する自治体によっては、廃棄物処理施設の立地に関する基準を設けているところが多く、その立地基準を満たしているかどうかを事前に確認し、不測の事態を避けるのが事前調査の目的となります。

計画地周辺状況の確認

周辺状況については、「事前調査①」で説明した都市計画図や、市区町村の都市計画課等で販売されている「白図」をもとに確認するのが良いと思われます。縮尺については、事前協議書等に位置図や見取図として添付が求められる2,500分の1(1/2500)が望ましく、A3の用紙であれば予定地の敷地境界から300mの範囲が十分確認できる縮尺となってます。

白図を購入したら計画地を中心にA3の用紙にコピーし、敷地境界から100m、200m、300mの範囲を描き、主要搬出入路、水路、敷地境界から200mまたは300m範囲内に所在する近隣住居等を確認します。

主要搬出入路

主要搬出入路の道路名、道路幅員を確認します。確認方法は、市道であれば市区町村役場等の道路を管理している部署(道路課等)、県道であれば計画地の市区町村を管轄している県の出先機関にて、道路台帳、道路幅員図などから確認します。道路台帳等は部分的なコピー等で販売している場合もありますので、その場合は該当する部分のコピーを取得します。

道路名、道路幅員が確認できたら、実際に計画地に行って自分の目で道路状況等を確認し、交通量の程度、歩道・ガードレール等の歩行者保護設備の有無などを把握するのが望ましいです。

場所によっては計画地と接道する道路の境界が確定されてなく、正確な道路幅員が不明な場合があります。その場合、正確な道路幅員を確定させるため、市区町村役場の道路課等と、計画地と道路の境界確定協議を行い、道路幅員を確定する必要が生じる場合もあります。

主要搬出入路の道路幅員が広いに越したことはありませんが、目安としては6m以上が望ましく、開発行為の許可が必要な場合は9m以上を必要とする場合もあります。

また、設置許可が必要な廃棄物処理施設の場合は、建築基準法第51条ただし書きの許可の要件として、「主要搬出入路が通学路と重複しないこと、重複する場合はガードレールや歩道等が整備され、歩行者の安全が確保される設備が整っていること」などを求める自治体もあるため、主要搬出入路が地元の小中学校の通学路に指定されていないかどうかを確認することが望ましいです。

給水、排水路等の状況

次に給排水の状況について確認します。

給水について

破砕施設であれば粉じんの飛散防止のための散水、焼却施設であれば排ガス冷却用の冷却水、またトイレ・手洗い用の生活用水など、処理施設運営上の給水が必要となるケースが多いと思います。工業用水の給水区域内および水道の配水管が計画地付近まで敷設されているのであれば、給水管の引き込み工事を行い工業用水、水道水を利用する方法、工業用水の給水区域外、配水管が計画地付近に敷設されていないときは井戸を掘削して井戸水を利用する方法など、給水の確保が必要となります。

井戸の掘削について

井戸を掘削して井戸水を利用するにあたっては、管轄の自治体によっては法令による地下水の採取規制を行っているところがあるため、井戸を掘削する前に必要な法令手続等について確認する必要があります。一般的に、吐出口の断面積が6平方センチメートルを超えるものについては、条例等で事前の手続きが必要なところが多いです。

排水について

処理施設の敷地内に降った雨水や、汚水・生活雑排水を排水するための排水先の確保が必要となり、その排水接続先を確認します。計画地付近に河川や水路がある場合は、市区町村役場の水路管理の部署(河川課等)に出向き、雨水や汚水の排水が可能かどうか、可能な場合はその手続き等について確認します。

農業用水路や排水路の場合は、その土地を管轄する土地改良区等が管理者となっている場合がありますので、その場合は土地改良区等に出向き、排水の可否について確認します。場所によっては雨水は敷地内浸透処理を推奨している市区町村もあります。また、汚水や生活雑排水についてはそのまま排水することができませんので、汚水は油水分離槽等の処理設備、生活雑排水については合併浄化槽で処理したうえで排水します。

工業専用地域等で下水や工場排水のインフラが整っているところは、その工業団地の管理組合等の排水基準に従って排水します。

近隣居住者等の状況

計画地周辺には可能な限り居住者がいないことが望ましいですが、工業専用地域や人里離れた山奥等でない限り、近隣居住者がいない計画地の確保は困難であると思われます。事前協議手続き等においては、近隣居住者等からの同意(以下「住民同意」と言います)の取得を求めているところが多いため、近隣居住者は少ないに越したことはありません。

住民同意の取得範囲については、廃棄物処理施設の種類に応じて敷地境界からの距離が決められており、生活環境に与える負荷が大きい施設ほど住民同意の取得範囲が広範囲に及びます。つまり、産業廃棄物の最終処分場や焼却施設等は住民同意の取得範囲が広く、破砕施設や設置許可が不要な廃棄物処理施設等は住民同意の取得範囲が狭くなります。

計画地の周辺にどの程度の居住者がいるのかは、同意取得が必要な居住者数の目安として確認しておくのが望ましいです。

なお、住民同意の取得については法令要件(廃棄物処理法で申請者に求められている許可取得の要件)ではないため、同意が取得できないからといって不許可処分になるというものではありません。

自治体別住民同意の範囲

東京都 千葉県 埼玉県
最終処分場 敷地境界から
300m以内
敷地境界から
500m以内
焼却施設 計画地近隣
(範囲の定め無し)
敷地境界から
200m以内
敷地境界から
500m以内
上記以外の
処理施設
計画地近隣
(範囲の定め無し)
敷地境界から
200m以内
敷地境界から
200m以内

※埼玉県については、計画地が工業専用地域の場合の緩和措置あり

周辺施設の状況

計画地の自治体によっては、計画地周辺に教育施設、医療施設、福祉施設等から一定の距離が離れていることを条件にしている場合があります。千葉県の中間処理施設については、学校、保育所、病院、診療所、図書館又は特別養護老人ホーム(以下「教育施設等」と言います)に係る土地の敷地境界から、おおむね100m以上離れていることを条件としております。また、計画地が宅地開発予定地、土地区画整理事業の予定区域を原則として含まないことも条件としております。

これらの条件に該当していないかどうかは、都市計画図または白図上で計画地の敷地境界から100m付近に教育施設等がないか確認します。なければ、計画地から最も近い教育施設等を確認します。

なお、都市計画図、白図ともに作成された年月日は直近のものでない場合が多く、都市計画図、白図が作成された後に計画地付近に教育施設等ができている場合もありますので、図面上で確認した後に必ず計画地付近を目視で確認する必要があります。

都市計画図、白図以外にも「ゼンリン住宅地図」による近隣居住者、教育施設等が確認できる計画地付近の電子地図がweb上で購入できますので、参考までにご確認ください。