廃棄物処理施設の構造基準
(中間処理施設)

指導要綱では、法令で定められた産業廃棄物処理施設の技術上の基準の他に、自然環境の保全、生活環境への影響の抑制、災害防止、搬入道路の保全を目的として、処理施設の構造基準を定めております。

1.共通基準

共通基準とは、全ての廃棄物中間処理施設において満たすべき構造的な基準となります。

(1)囲い等

①中間処理施設又は産業廃棄物の再生利用施設に係る土地(以下「中間処理場」又は「産業廃棄物の再生利用場」という。)の周囲には、みだりに人が中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場に立ち入るのを防止することができる囲いが設けられていること。

②囲いは、原則として中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場の全周囲に設けられていること。

③囲いの構造は、原則として下表の構造基準と同等又はそれ以上の耐久性を有するものとし、風圧等により容易に転倒、倒壊されないものとすること。

高さ 規格・材質
地盤面より1.8m以上 波型亜鉛引鉄板又はネットフェンス

ただし、周囲の状況等によっては、下表の基準と同等又はそれ以上の耐久性を有するものとすることができる。

高さ 規格・材質
地盤面より1.8m以上 有刺鉄線(1種)#14径2.0mm以上
杭間隔は2.0m以内
張り間隔は0.3m以下の6本張り以上

④出入口は、原則として1か所とし、門扉は③の構造を有し、施錠できるものとすること。

囲いの必要性

中間処理施設および再生利用施設内には、処理設備、重機、廃棄物保管ヤードなど危険なものが多く、子供や一般の人が簡単に立ち入ることができると、けがや事故に見舞われる可能性が高いため、簡単に人が立ち入りできないように囲いを設け、出入口は施錠ができる構造とすることを求めております。
囲いは自然災害等で倒壊・飛散し、歩行者や周囲の建物等に危険が及ばないように耐久性の高いものが要求されます。

(2)表示等

①入口の見やすい箇所に、一般廃棄物又は産業廃棄物の中間処理場であることを表示する立札その他の設備が、産業廃棄物の再生利用場であることを表示する立札その他の設備が設けられていること。
また、排出業者が設置する中間処理施設であって、現に事業活動を営んでいる場所以外の場所に設置するものについては、その旨を表示する立札その他の設備が設けられていること。
表示位置は、原則として門扉の付近とすること。

 

(3)排水処理設備

①中間処理施設又は産業廃棄物の再生利用施設からの排水を公共水域等に放流する場合は、その水質を下表の排水基準に適合させることができる排水処理設備を設けること。なお、排水の地下浸透処理は行ってはならないこと。

②中間処理施設又は産業廃棄物の再生利用施設に係る排水を放流するための放流先(河川等)が確保され、かつ、放流先までは管渠等の構造であること。

③排水処理設備が、中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場以外の場所に設けられる場合には、処理する排水を確実に当該排水処理施設に輸送できる施設等を設けること。

開渠、暗渠、管渠とは

渠(きょ)とは水の通り道のことを指します。

開渠(かいきょ)とは、地上に人工的に作られた水路のことで、身近なものとしては蓋無しの道路側溝のU字溝や、農業用水路などがあります。

暗渠(あんきょ)とは、地下に作られた水路のことで、以前は開渠だったものに蓋をして暗渠にした水路や、管渠を埋設した埋設配管等があります。

管渠(かんきょ)とは、管状の水路のことであり、下水道で使用される大型のコンクリート製のものから、身近にある塩ビ管などがあります。

(4)雨水等の流入防止

中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場内へ外部の雨水等が流入するのを防止する開渠その他の設備が設けられていること。
また、隣接地に雨水等が滞水するおそれのある場合は、これを常時排水できる設備を設けること。

(5)排ガス対策

①煙突等から排出される排ガスにより生活環境保全上の支障が生じないようにすることができる構造とすること。

②中間処理施設又は産業廃棄物の再生利用施設が、大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設に該当する場合には、煙突等に測定口を設けるとともに、ばい煙を大気汚染防止法に定める排出基準以下とし、必要に応じ適切なばい煙処理施設を設けること。

ばい煙とは

ばい煙とは、物の燃焼等に伴い発生するいおう酸化物ばいじん(煤・すす)、有害物質(カドミウム及びその化合物、塩素及び塩化水素、弗素、弗化水素及び弗化珪素、鉛及びその化合物、窒素酸化物)のことを言います。

ばい煙処理施設

ばい煙処理施設の例として、焼却施設における排ガス中のばいじん処理設備である、ろ過式集じん器・通称「バグフィルタ」と呼ばれる集じん設備や、排ガス中のいおう酸化物、塩化水素の除去設備として、消石灰(Ca(OH)2)等のアルカリ粉体をバグフィルタの前の煙道に吹込み、反応生成物を乾燥状態でバグフィルタで捕集し回収する方法などがあります。

(6)保管設備

中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場内に、必要に応じ次の要件を備えた廃棄物の保管設備を設置すること。
①廃棄物が飛散、流出し、及び地下に浸透し、並びに、悪臭が漏れるおそれのない構造であり、また廃棄物の種類及び保管高に応じ十分耐えられる構造であること。

②廃棄物を種類ごとに保管できること。

③必要に応じ室内で保管すること。

(7)搬入道路

①既存の道路を使用する場合は、必要に応じ、道路の拡幅又は待避所等の設置(廃棄物の使用は不可)により大型車両の通行に支障のないものとすること。

②搬入道路を新設する場合は、原則として幅員5.5メートル以上とし、アスファルトコンクリート舗装(廃棄物の使用は不可)以上の構造とすること。

③中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場内の道路は、車両の通行に支障のないものとすること。

(8)消火設備

可燃性の廃棄物を取り扱う場合は、適切な消火設備を設けること。

可燃性の廃棄物

可燃性の廃棄物として、廃油、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くずなどがこれに当たりますが、これらを一定量以上保管する場合は、消防法や火災予防条例等で届出が必要な場合があります。

(9)洗車設備

必要に応じ、タイヤ等に付着した泥等を洗い落とすことができる設備があること。

道路の汚損にご注意

中間処理場内で泥等がタイヤに付着したまま道路を通行し、道路を汚損することのないように、搬出時にはタイヤに付着した泥等を落とす設備の設置を求めております。
道路を汚す行為は道路法第43条で禁じられており、次のように定められております。

第43条 何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。
1 みだりに道路を損傷し、又は汚損すること
2 みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。

また、道路法第102条第3項では、罰則規定が設けられています。

第102条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
3 第四十三条(第九十一条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。

(10)駐車設備

必要に応じ中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場内に十分な広さを有する廃棄物運搬車両及び自家用車等の駐車場を設けること。

(11)管理事務所

①中間処理施設又は産業廃棄物の再生利用施設の設置及び維持・監理を行うために、必要最低限度の管理事務所を設置するとともに必要に応じて電話等を設置すること。

②設置場所は、中間処理場又は産業廃棄物の再生利用場内であること

図面等は、常に具備されるものであること。

2.個別基準

産業廃棄物の中間処理施設及び再生利用施設の構造基準は、上記の共通基準、および廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第12条の2の規定によるほか、以下の基準を満たす必要があります。

(1)構造耐力

自重、積載荷重その他の荷重、地震力及び温度応力に対して、構造耐力上安全であること

 

(2)腐食防止

産業廃棄物、産業廃棄物の処理に伴い生ずる排ガス及び排水、施設において使用する薬剤等による腐食を防止するために、必要な措置が講じられていること。

 

(3)飛散、流出及び悪臭防止

①産業廃棄物の飛散及び流出並びに悪臭の発散を防止するために必要な構造のものであり、又は必要な設備が設けられていること。

②悪臭の発散防止については、排出口及び敷地境界線における臭気濃度を「悪臭防止対策の指針」(昭和56年6月20日大第90号)に定める基準以下とし、必要に応じ適切な脱臭装置を設けること。

③産業廃棄物の破砕、粉砕等により粉じんの発生するおそれのある場合には、粉じん防止装置を設けること。

 

(4)騒音及び振動防止

①著しい騒音及び振動を発生し、周囲の生活環境を損なわないものであること。

②騒音及び振動防止については、敷地境界線における騒音及び振動を騒音規制法及び振動規制法並びに当該市町村公害防止条例に定める規制基準以下とし、必要に応じ適切な防音又は振動防止装置を設けること。

 

(5)受入設備及び貯留設備

①産業廃棄物の受入設備及び処理された産業廃棄物の貯留設備は、施設の処理能力に応じ、十分な容量を有するものであること。

産業廃棄物及び産業廃棄物に接触した水が地下に浸透しない構造であること。

 

(6)廃油の油水分離施設

廃油の油水分離施設を設置する場合は、(1)から(5)のほか、脱臭設備として燃焼設備、スクラバー等を設置すること。また、油水分離施設において加熱工程を有する場合は、加熱工程で発生する揮発性成分について、大気放散しない構造とすること。

スクラバーとは

スクラバーとは、悪臭を燃焼させる脱臭設備などから生じる排ガスを、安全な状態にして外部に排出する装置のことで、主に湿式と乾式があります。

湿式のスクラバーは、排ガスを水や洗浄液と接触させて排気中に含まれるガスや臭気、粒子を除去する方式です。主に水溶性のガスの処理に効果的です。

乾式スクラバーは、活性炭などの吸着剤を充填した層に排ガスを通過させることによって、排気中のガスを吸着処理する方式です。主に有機溶剤など水に溶けにくいガスの処理に効果的です。

(7)発酵施設

発酵施設(堆肥化施設、飼料化施設を含む。ただし、木くずのみを処理する堆肥化施設は除く)を設置する場合は、(1)から(5)のほか、次のとおりとする。
・受入廃棄物及び処理後物の保管施設は屋内に設置することとし、建屋は閉鎖できる構造とすること。
発酵施設は屋内に設置することとし、建屋は閉鎖できる構造とすること。
脱臭設備として燃焼設備、スクラバー等を設置すること。

 

(8)廃油の蒸留、精製施設

廃油の蒸留、精製施設を設置する場合は、(1)から(5)のほか、脱臭設備として燃焼設備、スクラバー等を設置すること。

 

(9)その他の設備

上記以外の処理施設を設置する場合は、(1)から(5)のほか、取り扱う産業廃棄物及び施設の稼働による生活環境保全上の支障が生じない施設とすること。

 

まとめ

指導要綱では、法律で義務付けられている産業廃棄物処理施設の技術上の基準を、設置許可を必要としない処理施設に対しても一定の基準を定めており、生活環境の保全、災害防止上の目的を達成するために必要最低限の施設基準となっております。この施設の技術上の基準を維持するために、法令及び指導要綱では施設の運営上必要な維持管理基準を定めております。
次のページでは、「廃棄物処理施設の維持管理基準」について詳しく見ていきます。