環境調査指針

環境調査とは、事業計画地およびその周辺における地形・地質、気象、動植物等の自然環境、公共水域、土地利用状況、水の利用状況、指定文化財等の生活環境の現状について、必要な範囲を調査することと、関係法令の規制状況について、規制区域と事業計画地との関係について調査し、廃棄物処理施設に係る計画に当たっての基礎資料を得ることを目的としております。環境調査の結果、必要に応じて環境保全対策措置や必要な手続き等についての指示が行われます。

「環境調査指針」とは、環境調査方法の基準を定めたものであり、環境調査を行う上での手引きとなります。今回は環境調査指針の内容に沿って、環境調査の方法や調査項目について詳しく見ていきます。

1.調査方法

調査方法は、原則として既存の資料を基に調査し、必要に応じて計画地の踏査(実際に計画地に赴いて調べること)等を行います。
既存の資料は作成された年月日が直近のものは少なく、既存の資料が作成された日と現在の計画地および周辺状況に変化が生じている可能性があるため、必要に応じて踏査等を行います。

「必要に応じて」とは、例えば計画地および周辺の災害の履歴や気象状況については、既存の資料以外で調査することは困難ですが、計画地周辺の土地利用状況については、地形図や住宅地図が作成された当時から変わっている状況を調査することは可能であるため、現地を確認する必要があります。

2.調査項目

(1)地形

  • 計画地その周辺について、くぼ地、平坦地、沢状地等の地形の現況を調査する。

地形図をもとに計画地およびその周辺の地形を調査し、現況の地形を現地にて確認します。調査結果には、その地形の地理的状況や造成等の履歴等の説明を記載します。
また、計画地およびその周辺の地形がわかる写真を撮影し、環境調査報告書に添付いたします。

 

(2)地質

  • 地形図等により、計画地及びその周辺について表層から50mまでの地質の分布状況を調査する。

地形図等により、計画地及びその周辺について表層から50mまでの地質の分布状況を調査します。

 

(3)災害

  • 計画地及びその周辺について、地すべり、土砂崩れ等の過去の災害の履歴等について調査する。

過去の災害の履歴については、計画地を管轄する市区町村等の防災課などで確認することができます。

 

(4)気象

  • 計画地の風向、風速及び降雨等の状況について調査する。

気象庁のホームページから過去の気象データを検索することができます。検索可能な地点は限られており、計画地に最も近い地点のデータを検索します。

 

(5)植物、動物

  • 計画地及びその周辺について、動植物の主な種類、貴重種の生息状況及び、漁業、養殖等の有無、規模等を調査する。

計画地を管轄する市区町村等の環境課などで確認する方法や、地元の住民からのヒアリング、計画地周辺の散策等で確認します。貴重種や絶滅危惧種等の生態系への影響について確認が行われます。

 

(6)地表水

①公共水域

  • 計画地及びその周辺について、河川、水路、湖沼等の名称、位置、規模及び計画地からの距離等を調査する。

河川、水路、湖沼等については、計画地を管轄する市区町村等の河川課・農政課など、計画地からの距離については位置図、地形図等で確認します。

 

②雨水、湧水

  • 計画地に係る雨水の流入、流出の状況及び計画地周辺の湧水の有無、規模等を調査する。

雨水の流入、流出の状況及び計画地周辺の湧水の有無については、計画地周辺を踏査するか、計画地を管轄する市区町村等の下水道課や排水課、環境課などで確認します。

 

(7)公有財産

  • 計画地及びその周辺について、国(県、市町村)有財産、住民の共有する土地、水路等の有無及び現況を調査する。

計画地及び計画地に隣接する土地に公有財産等があるかは、土地謄本を取得して確認します。

隣接する水路等の所有・管理は誰が行っているのかについては、計画地を管轄する市区町村の河川課、農政課、土地改良区、または自治会などで確認し、現況については計画地周辺を踏査します。

土地謄本について

土地謄本については、法務局で取得するか、あるいは「登記供託オンラインシステム」にて取得する方法などがあります。が、隣接地の土地謄本であれば、「登記情報提供サービス」で取得するのがお得です。

土地謄本
取得手段
費用
(1通)
取得に要する時間 備考
法務局 600円 当日
登記供託オンラインシステム 500円 最短で翌日
(郵送)
事前登録が必要
登記情報提供
サービス
332円 リアルタイム 事前登録が必要

 

 

(8)土地利用状況

①都市計画

  • 計画地及びその周辺について、都市計画法に基づく区域、地域地区、公共施設の予定地等の状況を調査する。

都市計画法に基づく区域、地域地区については都市計画図、または計画地を管轄する市区町村の都市計画課にて、公共施設の予定地等についも都市計画課で確認できます。

 

②土地利用

  • 計画地及びその周辺について、農地、優良農地、山林、宅地等の状況を調査する。

農地、山林、宅地等の状況については、土地謄本や地形図にて、優良農地については計画地を管轄する市区町村等の農政課にて確認し、現況について計画地周辺を踏査します。

 

③使用道路

  • 使用予定の公道(県道、市町村道)の1日あたりの交通量、交通安全施設の状況及び通学路の交通安全施設の状況を調査する。

搬出入路として使用する予定の県道の交通量については、国土交通省の「全国道路・街路交通情勢調査」のホームページにて、5年ごとに実施されている交通量調査結果から確認することができます。

市町村道については、計画地を管轄する市区町村等の道路管理課等で独自に行った交通量調査結果があれば確認できますが、ない場合は搬出入路として使用する市道の、計画地付近における交通量調査を実施します。道路幅員については、県道は計画地を管轄する都道府県の道路課、市道は計画地を管轄する市区町村等の道路課などで、道路台帳から確認します。

交通安全施設の状況については、歩道、ガードレール等の歩行者が安全に通行できる設備の有無について、道路の片側だけなのか両側に設置されているのか、どのくらいの距離に亘って設置されているのか等について、現地を踏査して確認します。搬出入路が通学路に指定されているかどうかは、計画地付近が学区となっている小中学校にて確認します。

 

④住宅等

  • 計画地周辺について、住宅等の分布状況及び常住人口等を調査する

計画地周辺の住宅等の分布状況については、住宅地図などで確認します。分布状況の範囲については、住民同意を必要とする範囲で問題ないと思われます。計画地周辺の常住人口については、1軒1軒回って確認する方法以外に確認する術がなく、また重要な個人情報のため防犯上の理由からも教えてくれるとは限りませんので、住宅件数からの推測で算出する方法しかないのかと思われます。

 

⑤既設建物

  • 計画地周辺について、学校、保育所、病院、診療所、図書館、特別養護老人ホーム及び住宅、店舗、その他これらに準ずる建物に係る敷地の位置及び計画地からの距離等を調査する。

既設建物等の調査については、まず都市計画図上で確認し、その後計画地周辺を踏査し、その結果を都市計画図上で図示します。

 

⑥宅地の開発予定地

  • 計画地周辺について、宅地開発が予定されている区域の位置、規模及び計画地からの距離等を調査する。

計画地周辺の宅地開発予定地については、計画地を管轄する市区町村等の都市計画課等で確認し、宅地開発予定地があれば都市計画図上に図示します。

 

(9)水の利用状況

※最終処分場以外の施設で、雨水以外放流しない場合は調査を要しません

①地下水の利用状況

  • Ⅰ 計画地周辺における飲料用自家井戸、共同井戸、農業用井戸、工業用井戸、その他の用に供する井戸の位置、分布等の状況を確認する。

届出が必要となる飲料用自家井戸等については、計画地を管轄する市区町村等の環境課等で確認できますが、届出を必要としない井戸については、1軒1軒回って確認する方法以外に確認する術がありません。また、自家井戸等については個人情報に該当するため、開示できない場合が多いです。

農業用井戸については、計画地を管轄する市区町村等の農業委員会や土地改良区にて確認し、工業用井戸については、計画地を管轄する都道府県や市区町村の環境部等で確認します。

  • Ⅱ 計画地周辺における上水道、簡易水道、専用水道、小規模専用水道等の水源の位置、種類、規模、給水範囲及び計画地からの距離等を調査する。

水道や水道水源の位置については、計画地を管轄する都道府県の水道局、または市区町村等の水道部等にて確認します。

 

②地表水の利用状況

  • Ⅰ 河川(1級、2級又は準用河川)又は海域までの放流経路及び当該経路の利水(飲料用、農業用工業用等)状況等を調査する。
  • Ⅱ 放流先の1級、2級河川又は準用河川の下流域における上水道、簡易水道、専用水道、小規模専用水道等の水源の位置及び計画地からの距離等を調査する。
  • Ⅲ 水道管の敷設状況 計画地周辺について、上水道の敷設状況を調査する。

 

(10)指定文化財及び遺跡

  • 計画地内について指定文化財、埋蔵文化財等の有無を調査する。

文化財等については、計画地を管轄する市区町村等の教育委員会にて確認します。埋蔵文化財等の調査については、書面による照会を申請し、結果通知について書面の交付を受けます。計画地が埋蔵文化財の包蔵地の場合は、設置工事の前に掘削調査を行わなければならない場合もあり、注意が必要です。

 

(11)関係法令の規制状況

  • 自然環境保全、緑地保全、農地保全、隣地保全、災害防止、海岸保全、文化財保護等の関係法令の規制区域と計画地との関係を調査する。

関係法令の規制状況については、「事前協議について①」の記事の中の表で「関係法令の指定状況」について説明しておりますので、参考にしてください。