事前調査

産業廃棄物処理施設の設置において事前調査はとても重要であり、中でも土地の選定における立地調査は極めて重要と言っても過言ではありません。土地の購入後、法令の規制により、その場所に産業廃棄物処理施設を設置することができないと判明してからでは手遅れで、計画変更を余儀なくされるだけではなく、新たな土地の購入と既に購入してしまった土地の処分等で、莫大な費用と時間を新たに費やすことにもなりかねません。
産業廃棄物処理施設の設置を検討している事業者のために、土地の選定から事前調査の重要性についてご説明いたします。

都市計画図

まず、産業廃棄物処理施設(以下「処理施設」と言います。)の設置を予定している土地が、都市計画法上の規制を受ける土地かどうかを確認します。確認する方法としては、処理施設の設置を予定している市区町村役場の都市計画課等にて「都市計画図」を入手します。縮尺倍率は10,000分の1ぐらいが見やすいかと思います。事前協議書等で添付が求められる都市計画図の縮尺倍率も、10,000分の1が多いと思います。部分的に購入できる都市計画図であれば数百円程度で購入が可能ですが、市区町村全域の都市計画図の場合、千円以上する場合もあります。

最近では市区町村のホームページから任意の場所の都市計画図をダウンロードできるサービスを行っているところもありますので、一度市区町村等のホームページを確認することをお勧めいたします。

都市計画図とは

都市計画とは、「住みやすいまち」を作るための計画のことを言います。例えば、自分が購入して住んでいる家の隣に、24時間稼働の工場や、遊園地・大型ショッピングモール、タワーマンションができたとしたら、常時騒音・振動や交通渋滞に悩まされ、マンションの陰になり日も当たらなく布団も洗濯物も干せない状況になり、「住みやすいまち」とは言えませんよね。このように、無秩序(好き勝手)にいろんな用途の建物を作ることを制限し、それぞれの用途に応じた建物は一定のルールのもとにエリアを設け、「住みやすいまち」を作ることを都市計画の目的としてます。

都市計画図とは、これらのルールをもとに作られた都市計画を、地図上で色分けしてわかりやすくまとめた図面のことを言います。

都市計画図の見方

 都市計画区域

都市計画法では、住みやすいまちを作るため、一定のルールのもとに工場やお店、住宅街などをエリア分けし、一体的な住みやすいまちづくりをおこなうエリアを「都市計画区域」として指定されている区域と、それ以外の区域(都市計画区域外)とに分けられていることがあります。

さらに、都市計画区域でも市街化区域と市街化調整区域に区域を分けている市区町村と、区域を分けていない市区町村とがあります。

市街化区域と市街化調整区域に区域を分けることを「線引き」と言い、区域を分けている都市計画区域を「線引き都市計画区域」、区域を分けていない都市計画区域を「非線引き都市計画区域」と言います。

市街化区域・市街化調整区域

市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であり、市街化調整区域とは、文字通り「市街化を抑制すべき区域」であり、原則として建築物を建てることはできません

用途地域

用途地域とは、市街化区域内において必ず定めなければならない地域で、建物の規模や用途の制限を定めております。用途に応じた建物を計画的に配置することにより、効率的な都市機能が整備され、無秩序に建築物を建てることができないように規制が設けられてます。用途地域は、主に住居系、商業系、工業系の以下の13種類に分類されます。

都市計画図上では用途地域ごとに色分けされており、建ぺい率や容積率が指定されてます。

用途地域

  • 第一種低層住居専用地域
    低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
  • 第二種低層住居専用地域
    主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
  • 第一種中高層住居専用地域
    中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
  • 第二種中高層住居専用地域
    主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
  • 第一種住居地域
    住居の環境を保護するため定める地域
  • 第二種住居地域
    主として住居の環境を保護するため定める地域
  • 準住居地域
    道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域
  • 田園住居地域
    農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
  • 近隣商業地域
    近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域
  • 商業地域
    主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域
  • 準工業専用地域
    主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域
  • 工業地域
    主として工業の利便を増進するため定める地域
  • 工業専用地域
    工業の利便を増進するため定める地域

都市計画図凡例(参考)

今回予定している処理施設の計画予定地が、都市計画法上のどの区域等に該当するのかを都市計画図上で確認いただけたかと思いますが、計画予定地が用途地域内であった場合、建築物を設けて産業廃棄物処理施設のような工場施設が設置しやすい用途地域は、工業系の用途地域(準工業地域、工業地域、工業専用地域)に限られます。

○用途地域による建築物の用途制限の概要(抜粋)

※1 原動機・作業内容の制限あり。作業場の床面積について①50㎡以下 ②150㎡以下
 ■農産物を生産、集荷、処理及び貯蔵するものに限る。
※2 原動機の制限あり。作業場の床面積について①50㎡以下、②150㎡以下、③300㎡以下
※3 ①1500㎡以下、2階以下 ②3000㎡以下

建築物とは

建築物とは、建築基準法の定義では「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」とされています。また、これに付属する門や塀、建築設備なども建築物に含まれます。用途地域における建築物の制限は、建築物についての制限であり、建築物を設けずに産業廃棄物処理施設を設置するうえでは規制を受けません。ただし、騒音、振動、粉じん、汚水等の発生防止のための建屋や、マニフェスト伝票の受け渡し、帳簿の保存のための事務所など、建築物を設けずに産業廃棄物処理施設の設置は現実的ではありません。