許可の取消しについて

令和3年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)における産業廃棄物処理業、特別管理産業廃棄物処理業の行政処分件数は全国で249件発生しており、その中でも最も重たい許可取消し処分件数は、212件(前年度248件)となっております(環境省 産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和3年度実績))。

 

産業廃棄物処理業の許可業者において、同業他社の許可取り消し事例は気になるところであり、なぜ許可取り消しに至ったのか、その理由・原因も気になるところであると思います。

 

また、自社の行為が法令違反に当たるかどうか、法令違反に該当した場合はどのような罰則が適用されるのか、気になるところですね。

 

そこで今回は、許可が取り消しとなる一番重たいペナルティについて詳しく見ていきたいと思います。

 

許可が取り消されるケース

許可が取り消されるケースは、大きく分けると次の3つのパターンに分けられます。

許可が取り消されるケース

法人が欠格要件に該当した場合
役員、株主等、政令使用人、未成年者が申請者となる場合の法定代理人が欠格要件に該当した場合
違反行為をし、情状が特に重い場合

※株主等:法人の発行済株式総数の100分の5以上を有する株主または出資総額の100分の5以上の出資者)

欠格要件とは

欠格要件とは、申請者である個人または法人、法人の役員、政令使用人、法人の発行済み株式総数の100分の5以上を有する株主または出資総額の100分の5以上の出資者が、以下の要件に該当する場合を言います。

  • 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者
  • 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 廃掃法、浄化槽法または環境関連法令、暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)の規定に違反し、罰金刑を受けて5年を経過しない者
  • 刑法上の罪(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫、背任)もしくは暴力行為等処罰法(暴力行為等処罰ニ関スル法律)の罪を犯し、罰金刑を受けて5年を経過しない者
  • 許可を取り消されて5年を経過しない者
  • 意見陳述手続き(聴聞)を経て許可が取り消される処分について、聴聞の通知を受けた日から許可取り消し処分が決定する日までの間に廃業届を提出した者で、届出の日から5年を経過しない者
  • 前述した廃業届を提出した場合において、聴聞の通知の日前60日以内に法人の役員、政令使用人であった者で、廃業届の日から5年を経過しない者
  • その業務に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

欠格要件に該当した場合、許可は「取り消さなければならない」となっているため、必ず取り消されるという非常に重たい処分となっております。

 

後述しますが、過去5年間(平成30年12月~令和5年3月)の千葉県における許可取り消し処分事例でも、法人、役員、使用人、株主等が欠格要件に該当して取り消されたケースが最も多く、全体の約8割を占めております。

 

違反行為をし、情状が特に重い場合とは

情状が特に重い場合とは、環境省の通知(環循規発第2104141号・令和3年4月14日)で以下のとおり指針が示されております。

違反行為をし、情状が特に重い場合

「『情状が特に重いとき』とは、不法投棄など重大な法違反を行った場合や違反行為を繰り返し行い是正が期待できない場合など、廃棄物の適正処理の確保という法の目的に照らし、業務停止命令等を経ずに直ちに許可を取り消すことが相当である場合をいい、違反行為の態様や回数、違反行為による影響、行為者の是正可能性等の諸事情から判断されるものであること。なお、法第25条から第27条までに掲げる違反行為を行った場合については、重大な法違反を行ったものとしてこれに該当すると解して差し支えないこと。」

※環境省通知 環循規発第2104141号・令和3年4月14日

情状が重くない軽微な違反行為に対しては、行政指導としての改善指示等により、定められた期日までに改善し、改善報告書の提出で済む場合や、情状が重い違反行為に対しては、事業の一部停止、全部停止処分が命ぜられる場合があります。

 

すなわち、違反行為すべてが「違反行為 → 罰金等のペナルティ → 欠格要件該当 → 許可取り消し」に至るというものではなく、生活環境保全上の支障が現実に生じている重大な違反行為を行った場合や、違反行為を繰り返し行い、廃棄物の適正処理が期待できないなど、悪質性が高い行為が「情状が特に重い場合」と判断されます。

 

過去5年間(平成30年12月~令和5年11月)の千葉県内の許可業者における、許可取り消し事案について調べてみました。

許可取り消し処分を受けた事業者の業種

許可取り消し処分を受けた業種の中では、建設業が6割以上を占めております。

これは、建設工事に伴い生ずる産業廃棄物については元請業者が排出事業者となり、下請業者が廃棄物の運搬を行うには収集運搬業の許可が必要となる理由から、必然的に建設業者が産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するケースが多いという理由によるものと思われます。

 

取り消された許可の種類

取り消された許可の種類としては、収集運搬業許可が9割近くを占めております。

これは、産業廃棄物処理業許可(収集運搬業・処分業)全体に占める収集運搬業許可の割合にほぼ比例しております。

許可取消しの理由

許可取り消し理由として最も多いのが、欠格事由への該当による取消しで、全体の約8割を占めております。

これは、廃掃法以外の法令で罰金刑や禁固刑以上の刑が確定した場合でも、欠格事由に該当するという理由や、破産手続き開始の決定等を受けても欠格事由に該当するなどの理由からと思われます。その辺を詳しく見ていきたいと思います。

欠格事由の内容

欠格事由の内容としては、両罰(法人と役員の両方に課せられた刑罰)も含め罰金刑以上の刑が確定したことによる欠格事由への該当が最も多く、全体の約7割を占めております。

ここで注目したいのは、破産手続き開始の決定による欠格事由への該当が全体の3割を超えているというところです。

廃掃法では、産業廃棄物の処理委託については2者間契約(排出事業者と収集運搬事業者、排出事業者と処分業者)を義務付けておりますが、処理委託料金の支払い方法までは定めておらず、収集運搬事業者が処分代金を代理受領して処分業者に支払うというケースが少なくありません。

この場合、収集運搬事業者が破産状態にある場合は、代理受領した処分代を自社で確保したいがために、不法投棄等の不適正処理が行われる恐れがあり、排出事業者にしてみれば、委託業者の不適正処理による排出事業者責任が問われ兼ねません。

委託する事業者が許可業者であったとしても、可能であれば委託契約を締結する際には直近の決算書の内容を確認し、適正処理が期待できる経理的基礎を有しているかどうかの確認もしておきたいところです。

 

罰金刑の内訳

罰金刑23件のうち、廃掃法違反による罰金刑が最多で15件、中でも「焼却禁止違反」、いわゆる「野焼き」が12件を占めております。

次いで不法投棄が3件と、不法投棄よりも焼却禁止違反による罰金刑が多いのが意外のような気もします。

野焼き行為より不法投棄のほうが人目につかない場所や時間帯で行われることが多く、違反者がなかなか特定できないといった事情も考えられます。

 

禁固刑以上の内容

次に禁固刑以上の内容について見てみると、道路交通法、自動車運転処罰法が最も多い6件であり、全体の約4割を占めております。廃掃法違反による禁固刑以上は2件となっており、廃掃法以外の違反による禁固刑以上に占める割合が9割近くになっております。

廃掃法や環境関連法令違反においては、罰金刑以上で欠格要件に該当しますが、道路交通法をはじめとするそれ以外の法律においては、禁固刑以上が欠格要件に該当するため、一般的に最も身近な法律である道路交通法違反による禁固刑以上が多くなっていると思われます。

 

情状が特に重い違反

情状が特に重い違反の理由としては、特に突出して多いものはありませんが、内容的には脱法的な違反行為や、違反行為が繰り返し行われ改善の見込みがない場合等の、悪質性が高い違反により許可取消しに至ったケースが多く見られます。

まとめ

廃掃法の許可における取消し事由は、廃掃法違反だけに限らず、あらゆる法令違反においても許可取消しに至る可能性があり、廃掃法を遵守して適正処理に努めることはもちろんのこと、あらゆる法令に対してもコンプライアンスが求められます。

特に申請者、法人の役員等においては、法令違反や自己破産が、事業または企業の行く末を左右する重大な局面を招く可能性も否定できませんので、十分注意が必要です。