欠格要件

欠格要件とは、「申請者の一般的適性について、法に従った適正な業の遂行を期待し得ない者を類型化して排除することを趣旨とするものであり」と環境省の通知(令和3年4月14日環循規発第2104141号)の中で定義されております。
わかりやすく言うと、法律のルールに従って産業廃棄物処理業を的確に行うことができそうにない人の基準を作って、産業廃棄物処理を事業として行いたい申請者がその基準に該当する場合は「許可を出しません」、または既に産業廃棄物処理業の許可を取得した事業者がその基準に当てはまってしまった場合は「許可を取り消します」という趣旨のものです。

ではその「産業廃棄物処理業を的確に行うことができそうにない人の基準」を詳しく見ていきましょう。

1.心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定める者※(法第7条第5項第4号イ)

令和元年12月14日の廃棄物処理法改正以前は、「成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの」という条文でしたが、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が令和元年6月14日に公布されたことを受け、このように改正されました。

2.許可申請書に添付が必要な書類の収集」の記事でも触れておりますが、この法改正により、産業廃棄物処理業許可申請書に従来添付が必要とされていた「登記されていないことの証明書」の添付は法令要件ではなくなりましたが、一方「精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」に該当するかどうかを確認する書類として、「登記されていないことの証明書」の添付を従来どおり求めている自治体が多いです。

※環境省令で定める者とは、精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者のことをいいます。

 

2.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(法第7条第5項第4号ロ)

復権とは、破産手続開始によって破産者に課せられた権利の資格制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復させることで、具体的には以下の事由により復権が得られます。

復権事由

①免責許可決定の確定
②破産手続同意廃止決定の確定
③再生計画認可決定の確定
④破産手続開始決定後に詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年を経過した場合
⑤裁判による復権

上記のいずれかに該当する場合は、復権を得ることができます。
この破産手続開始の決定を受けてから復権を得られていない者は、産業廃棄物処理業の許可を取得することはできないということになり、既に産業廃棄物処理業の許可を取得している場合は、許可が取り消されます。

 

3.禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者(法第7条第5項第4号ハ)

法令に抵触して禁固以上の刑に処せられると欠格要件に該当することになります。例えば道路交通法に違反して禁固以上の有罪判決を受けた場合、申請者は産業廃棄物処理業の許可を取得することはできませんし、許可取得者は許可取消処分となります(執行猶予付判決でも欠格要件に該当となります)。

この条文は、生活環境の保全を目的とする法令違反等に限定されておりませんので、あらゆる法令が対象となります。

 

4.廃棄物の処理及び清掃に関する法律、浄化槽法、その他生活環境の保全を目的とする法令※で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法(傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合及び結集・脅迫・背任の各罪に限る)若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者(法第7条第5項第4号ニ)

この条文は、生活環境の保全を目的とする法令、暴力団対策法、刑法、暴力行為等処罰法に違反し、罰金刑を科されると欠格要件に該当するということになります。申請者は、罰金刑に処せられてから5年を経過していない場合は許可を取得することはできませんし、許可取得者は許可取消処分となります。

※その他生活環境の保全を目的とする法令

  • 大気汚染防止法
  • 騒音規制法
  • 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
  • 水質汚濁防止法
  • 悪臭防止法
  • 振動規制法
  • 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
  • ダイオキシン類対策特別措置法
  • ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

 

5.重大な廃棄物処理法違反又は浄化槽法の規定により、許可を取り消され、その取消の日から5年を経過していない者(当該取消しが法人の場合、聴聞通知のあった日又は取り消しの処分がなされた日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該取消の日から5年を経過しないものを含む。)(法第7条第5項第4号ホ)

この条文は、重大な廃棄物処理法等の違反により許可を取り消されたものが、取消の日から5年を経過していない場合は欠格要件に該当し、許可を取得することができないことになります。また、欠格要件に該当する者が法人の場合、聴聞の通知があった日、または許可取消処分がなされた日から遡って60日の間までにその法人の役員であった者は、許可取消処分の日から5年を経過していない場合も同様に許可を取得することができません。

聴聞とは?

「聴聞」とは、許可取消処分等の重大な不利益処分をする場合の、前段の意見陳述手続きのことを言います。わかりやすく言うと、許可自治体が不利益処分を科すに当たって「異論反論があれば聞きますよ」という趣旨のものです。

 

6.廃棄物処理法、浄化槽法の許可の取り消しに係る聴聞通知があった日又は欠格要件に該当することが客観的に明らかになった日から、その処分を決定するまでの間に産業廃棄物処理業又は浄化槽業務の全部廃止届出を提出した者で、その届出の日から5年を経過しないもの。(法第7条第5項第4号ヘ)

この条文は、許可取消処分が決定的であると認識した者が、許可取消処分を逃れるために意図的に廃止届を提出し、またすぐに許可申請を行って許可を取得するという悪質な違反者を排除するための規定です。

 

7.上記6で規定する期間内に産業廃棄物処理業又は浄化槽業務の廃止届の提出があった場合において、聴聞通知の日前60日以内に当該法人の役員若しくは政令で定める使用人であった者、又は個人の政令で定める使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの(法第7条第5項第4号ト)

この条文は、上記6の条文をさらに聴聞通知の日前60日以内に法人の役員であったもの、法人・個人の政令使用人であったものまでに欠格要件該当者の範囲を広げた規定です。

 

 

その他の欠格要件は、以下のとおりです。

8.廃棄物処理及び浄化槽の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認められる相当の理由がある者(法第7条第5項第4号チ)

9.暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(法第14条第5項第2号ロ)

10.未成年者の法定代理人が1~9までのいずれかに該当するもの(法第14条第5項第2号ハ)

11.法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに1~9までのいずれかに該当する者のあるもの(法第14条第5項第2号ニ)

12.個人で政令で定める使用人のうちに1~9までのいずれかに該当する者のあるもの(法第14条第5項第2号ホ)

13.暴力団員等がその事業活動を支配する者(法第14条第5項第2号ヘ)