産業廃棄物処理の委託

産業廃棄物の処理責任は産業廃棄物を排出した事業者にあると、廃棄物処理法でも明確に規定されております(法第3条第1項)。しかしながら、排出事業者が自ら産業廃棄物を処理することができない場合は、他人に処理を委託することができます。この場合、廃棄物処理法で定められた処理委託基準に従って処理を委託する必要があります。排出事業者は、処理を委託したら終わりではなく、処分を委託する事業者が適切に処理を行うことができる施設を有しているかどうかを直接確認するなどして、産業廃棄物の排出から最終処分(再生を含む)が終了するまでの一連の処理が適切に行われるために、必要な措置を講ずるように努める必要があります。では処理委託基準について、詳しく見ていきます。

処理委託基準

1.産業廃棄物の運搬にあっては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であって委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること(令第6条の2第1号)

産業廃棄物の収集運搬を委託する場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可を持っている事業者のうち、許可の事業範囲に運搬できる許可品目を有している事業者に委託しなければなりません。

2.産業廃棄物の処分又は再生にあっては、他人の産業廃棄物の処分又は再生を業として行うことができる者であって委託しようとする産業廃棄物の処分又は再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。

産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合は、産業廃棄物処分業の許可を持っている事業者のうち、許可の事業範囲に処分又は再生できる許可品目を有している事業者に委託しなければなりません。

処理と処分について

処理とは、産業廃棄物の収集運搬、処分(中間処理、最終処分)、再生を含めて「処理」と称してます。処分とは、産業廃棄物の処分または再生を「処分」と称しています。

3.委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。

委託契約については、次項で詳しく見ていきます。

処理委託契約書

処理委託契約は書面により行うこととされてますので、「産業廃棄物処理委託契約書」を作成する必要があります。また処理委託契約は、排出事業者と収集運搬事業者排出事業者と処分事業者との間でそれぞれ締結する必要があり、排出事業者と収集運搬事業者と処分事業者の3者間での契約は違法となり禁止されています。

その理由としては、排出事業者が排出した産業廃棄物を収集運搬事業者が引き取りに来た際に、その廃棄物をどこの事業者に処分を委託するのかを任せてしまうことを禁止しているからです。排出事業者としては、廃棄物を引き取りに来た収集運搬業者に処分も含めて委託したほうが楽ですし、誰もがそのように発想するのが一般的です。しかし、処分も含めて収集運搬業者に処理を委託することにより、収集運搬業者が少しでも多くの委託料金を自分のものにするための方法を考える状況を作ることになり、その状況が人里離れた山中への不法投棄等の不適正処理を招いてしまう原因にもなりかねません。

そのため、排出事業者が自ら指定する処分業者へ処分を委託し、収集運搬業者には排出事業者が指定した処分事業者に運搬だけを委託することにより、上記のような不適正処理を防ぐことを目的としてます。

委託契約書の記載内容

委託契約書には記載すべき事項が法律で定められており、その記載事項を欠くと処理委託基準違反となり、罰則が科せられます(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)。排出事業者は、法定記載事項がもれなく委託契約書に記載されているかを必ず確認する必要があります。

法定記載事項

1.委託する産業廃棄物の種類及び数量

2.産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地

3.産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力

4.産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第15条の4の5第1項の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨

5.産業廃棄物の処分を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力

6.委託契約の有効期間

7.委託者(排出事業者)が受託者(処理業者)に支払う料金

8.受託者が産業廃棄物収集運搬業又は産業廃棄物処分業の許可を受けた者である場合には、その事業の範囲

9.産業廃棄物の運搬に係る委託契約にあっては、受託者が当該委託契約に係る産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所

の所在地並びに当該場所において保管できる産業廃棄物の種類及び当該場所に係る積替えのための保管上限

10.9の場合において、当該委託契約に係る産業廃棄物が安定型産業廃棄物であるときは、当該積替え又は保管を行う場所において他の廃棄物を混合することの許否等に関する事項

11.委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報
・当該産業廃棄物の性状及び荷姿に関する事項
・通常の保管状況の下での腐敗、揮発等当該産業廃棄物の性状の変化に関する事項
・他の廃棄物と混合等により生ずる支障に関する事項
・当該産業廃棄物が次に掲げる産業廃棄物であって、日本産業規格C0950号に規定する含有マークが付されたものである場合には、当該含有マークの表示に関する事項
①廃パーソナルコンピューター
②廃ユニット形エアコンディショナー
③廃テレビジョン受信機
④廃電子レンジ
⑤廃衣類乾燥機
⑥廃電気冷蔵庫
⑦廃電気洗濯機

12.委託する産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨

13.その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項

14.委託契約の有効期間中に当該産業廃棄物に係る前号の情報に変更があった場合の当該情報の伝達方法に関する事項

15.受託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項

16.委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項

委託契約書に添付が必要な書面

委託契約書には、環境省令で定められた書類の添付が義務付けられております。具体的には以下のとおりです。

1.産業廃棄物収集運搬委託契約書への添付書類

・産業廃棄物の収集運搬を委託する事業者の産業廃棄物収集運搬業許可証のコピー

委託する産業廃棄物の積み下ろし(収集する場所と運搬先の場所)を行う都道府県知事等の許可証のコピーが必要です。
産業廃棄物収集運搬業者の許可の事業範囲に、収集運搬する産業廃棄物の種類・積替保管の有無が記載されていることの確認が必要です。
その他、許可に条件が付されている場合は、契約書の内容との整合性の確認が必要です。

2.産業廃棄物処分委託契約書への添付書類

・産業廃棄物の処分を委託する事業者の産業廃棄物処分業許可証のコピー

処分を行う施設を管轄する都道府県知事等の許可証であることの確認が必要です。
産業廃棄物処分業者の許可の事業範囲に、処分を委託する産業廃棄物の種類・処分の方法が含まれていることの確認が必要です。
その他、許可に条件が付されている場合は、契約書の内容との整合性の確認が必要です。

産業廃棄物処理委託標準契約書

自治体のホームページによっては、産業廃棄物処理委託標準契約書をダウンロードすることも可能です。参考までに千葉県の標準処理委託契約書の記載例をご確認ください。