建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外
建設工事廃棄物について
建設工事に伴い発生する廃棄物については、発注者から直接工事を請負った建設業者、つまり元請業者が排出事業者となり、建設工事から発生する廃棄物全体について、発生から処理に至るまで元請業者が処理の責任を負うことになります(廃掃法第21条の3)。
これは、平成22年の廃棄物処理法の改正の際に条文で明記されました。
つまり、住宅やビルの新築・増築工事、リフォーム工事、解体工事等について、元請業者から工事を請負った下請業者は、その下請工事から発生した廃棄物について、廃棄物処理業の許可及び元請業者から処理の委託が無ければ、廃棄物の運搬または処分を行うことができなくなりました。
今までは、下請工事から発生した廃棄物は下請業者が排出事業者となり、下請業者が廃棄物処分業者と直接処理委託契約を締結し、廃棄物処理業の許可がなくても下請業者が自ら処理委託先まで運搬することが可能でしたが、現在はこの行為は無許可処理という違法行為に該当し、違反した場合には5年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金、または両方が科されるという、非常に重たい処分が待ち受けてます(廃掃法第25条第1項第13号)。
ほんの数万円程度の金額が低い工事を元請業者から請負った場合でも、その工事から発生した廃棄物については、少ない量だからといって下請業者が直接処分業者に許可なく委託なく運搬する行為は、違法行為となりますので十分注意が必要です。
建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外
ただし、以下の場合に限っては下請業者が排出事業者とみなされ、自ら運搬することが可能となり、また、排出事業者に課される廃棄物処理法の規定が下請業者にも適用されます。
産業廃棄物保管基準の適用
元請業者から請負った建設工事によって排出された廃棄物の保管については、その請負った下請業者も排出事業者としてみなされ、産業廃棄物保管基準等が適用されます。
つまり、下請工事にて発生した廃棄物を保管する場合は、下請業者も産業廃棄物保管基準に従い、適正かつ適法に保管する義務が生じます。
詳しくは「いろいろな産業廃棄物保管基準」のページをご参照ください。
下請業者でも廃棄物処理業の許可なしで行える処理(廃掃法第21条の3第3項)
以下のいずれの条件にも該当する場合は、廃棄物処理業の許可がなくても、下請業者が自ら廃棄物の運搬を行うことが可能となります。
- 工事請負契約書に、下請業者が廃棄物の運搬を行う旨の内容が記載されていること。
- 以下のいずれかの工事に該当する場合
①新築工事、増築工事、解体工事に該当しない改築工事(リフォーム工事)であって、元請工事の請負金額が500万円以下(消費税含む)であるもの。
②引き渡し後の建築物に瑕疵があり、その瑕疵の修繕工事の請負金額が500万円(消費税含む)以下であるもの。 - 次のように運搬する場合
①1回あたりの運搬量が1㎥を超えないように区分して運搬すること
②下請工事から発生した廃棄物の事業場がある都道府県、またはその事業場がある都道府県に隣接する都道府県内の処理施設(積替保管施設を含む)、または元請業者が所有権・使用権を有する保管施設に運搬する場合。
③廃棄物を運搬する途中において、保管を行わないこと。
上記の内容をまとめると、
①工事請負契約が締結され、下請業者が自ら廃棄物の運搬を行う旨が記載されていること
②請負う工事が500万円以下のリフォーム工事または瑕疵の修繕工事であること
③1㎥を超えないように区分して運搬すること
④都道府県内または隣接する都道府県の処理施設へ直接持ち込むこと、または元請業者が有する保管施設へ運搬すること
⑤運搬の途中で保管を行わないこと
となりますが、これらの要件をすべてを満たしたうえで運用するのには、現実的にはなかなか難しいとは思います。
下請業者が廃棄物の運搬または処分を委託できる場合(廃掃法第21条の3第4項)
建設工事に伴って生じた廃棄物の排出事業者については、元請事業者が排出事業者になり、排出事業者責任を負うと廃掃法第21条の3第1項で明記されましたが、同条第4項では下請業者が排出事業者となり、廃棄物の処理の委託を元請業者に代わって行うことができるという内容の条文になっております。とても混乱する条文で、どのように解釈すべきかわからないといった方も多いと思われます。
この条文の解釈については、環境省からの通知で以下のような例外事案が発生した場合でも、下請業者に適正な処理の委託を行わせるための趣旨であると説明しております。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の
一部を改正する法律等の施行について(通知)
(平成23 年2 月4 日・環廃対発第110204004号、他)
第十七 第4抜粋
「しかし、元請業者が建設工事に伴い生ずる廃棄物を放置したまま破産等により消失した場合など、やむなく下請負人が自ら当該廃棄物の処理を委託するというような例外的な事例があった場合、下請負人は事業者でも廃棄物処理業者でもないことから、法に基づく規定が適用されず、下請負人により廃棄物が不適正に委託され、結果的に当該廃棄物の不適正処理につながるおそれがある。」
この場合、排出事業者責任を元請業者だけに限定してしまうと、排出事業者責任のない下請業者が無許可業者等へ処理を委託したり、あるいは委託業者が不法投棄等の不適正処理が行われても、下請事業者に排出事業者責任を問うことができなくなります。
また、「建設工事に伴い生ずる廃棄物について下請負人がその運搬又は処分を他人に委託する場合には・・・」と始まる条文から、下請業者の自ら処理までを認めたものではなく、あくまでも処理の委託についてのみが可能となります。
従って、この場合は下請業者にも排出事業者責任同様の処理委託基準が課され、書面による処理委託契約の締結、マニフェスト伝票の交付など、適正な処理委託が求められます。
上述した不適正処理を防ぐことを目的として追加された条文ですが、だからといって、下請業者が廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではないとの見解も示しております。
ますます混乱しそうですが、下請業者からしてみれば、「不適正処理につながるおそれがある」と言われるよりは、「廃棄物の適正処理が期待できる」と前向きな解釈として捉えていただきたいと願います。