目次
2.許可申請書に添付が必要な書類の収集
産業廃棄物収集運搬業許可の審査において、申請者の実態、許可基準を確認するため、主観的に作成した申請書の内容を客観的に証明するための公的な書類等の添付を求めています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」と言います)第9条の2では、産業廃棄物収集運搬業許可申請書に記載する内容や、許可申請書に添付が必要な書類について具体的に記されております。
許可権限のある各自治体によっては、法令で定められている添付書類以外に独自に添付書類を求める場合もありますが、ここでは法令根拠のある添付書類(法律、政令、規則等で求められている添付書類)について、以下に詳しく見ていきます。
事業計画の概要を記載した書類
事業計画の概要について記載すべき項目は以下のとおりであり、これは規則様式第6号の2・第8面に定められた書式がありますので、この書式の内容に沿って記載します。
とは言っても、具体的にどのような内容を記載すべきかは初めての場合は分からないことが多いと思います。
各自治体では、このような要望に対応すべく、ホームページ上や許可申請の手引き等に「記載例」を掲載している場合が多く、それを自分の場合に置き換えることによりスムーズに作成することができます。
※事業計画の概要を記載した書類の作成方法については、後述する「3.許可申請書の作成 その2」をご参照ください。
事業計画の概要を記載した書類(具体的項目)
1.事業の全体計画について
2.取り扱う産業廃棄物の種類及び運搬量等
3.運搬施設の概要
(1)運搬車両一覧
(2)その他の運搬施設の概要
(3)積替施設又は保管施設の概要
4.収集運搬業務の具体的な計画
(車両毎の用途、収集運搬業務を行う時間、休業日及び従業員数を含む。)
5.環境保全措置の概要
(運搬に際し講ずる措置、積替施設又は保管施設において講ずる措置を含む。)
事業の用に供する施設の構造を明らかにする書類
事業の用に供する施設の構造を明らかにする書類についてですが、積替・保管なしの収集運搬業許可申請の場合の「事業の用に供する施設」とは、収集運搬車両、運搬容器、駐車場のことを指しており、具体的には以下の書類となります。
事業の用に供する施設の構造を明らかにする書類(積替・保管なし)
1.収集運搬車両の写真(真正面と真横、各1枚)
2.運搬容器の写真
3.駐車場の付近の見取図
4.自動車検査証(車検証)の写し
※電子車検証の場合は「自動車検査証記録事項」の写し
電子車検証について
自動車検査証については2023年1月4日より車検証が電子化されたことにより、取り扱いが少し変わります。
電子車検証には、必要最小限の記載事項以外は電子車検証にに埋め込まれたICタグに記録され、必要最小限の情報以外は電子車検証からは読み取ることができなくなります。ICタグに記録された情報は、ICカードリーダーが接続されたパソコンや、読み取り専用アプリをダウンロードしたスマートフォンでしか見ることができないため、これまで車検証上で確認できた所有者情報、使用者住所、有効期間等については、「自動車検査証記録事項」でしか確認できなくなります。
電子車検証は、2023年1月4日以降に新規登録や継続検査等、従来であれば紙の車検証が新しく発行される手続きを行った車両について電子車検証が発行されます。
「自動車検査証記録事項」は、電子車検証のICタグに記録され、券面で確認できない事項を容易に確認できるよう、2023年1月の車検証の電子化から少なくとも3年間は、運輸支局の窓口で電子車検証の交付時と更新時に補助的にお渡ししている書面となります。
「自動車検査証記録事項」は、運輸支局の窓口でお渡しするほか、「車検証閲覧アプリ」でPDFデータをダウンロードすることで入手することもできます。
※国土交通省「電子車検証特設サイト」よくあるご質問より
積替・保管ありの収集運搬業許可申請の場合の「事業の用に供する施設」とは「積替・保管施設」のことであり、以下の書類のことを指しております。
事業の用に供する施設の構造を明らかにする書類(積替・保管あり)
1.積替・保管施設の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図、構造図
2.設計計算書
3.付近の見取図
積替・保管施設の構造を明らかにする図面について、
①平面図
平面図は積替・保管施設の配置図とも言うべき図面で、積替・保管施設内のどの場所に、どの種類の産業廃棄物を保管するのか、駐車スペースはどの場所か、などを表した図面になります。
保管容器を用いて保管する場合は、保管容器の平面図になります。
②立面図
屋外において保管容器を用いずに産業廃棄物保管する場合は、保管する産業廃棄物の高さが制限されますので、保管場所の囲いの高さに応じた保管高さがわかる立面図になります。
保管容器を用いて保管する場合は、保管容器の立面図になります。
③断面図、構造図
積替えのための保管施設に係る要件に、囲いが設けられていること、保管する産業廃棄物の荷重が直接囲いにかかる構造である場合は、構造耐力上安全であること、飛散・流出および地下浸透・悪臭発散防止措置が講じられていることを求めており、それらの措置を図示した図面になります。
収集運搬車両、積替・保管施設の所有権を有することを証する書類
施設の所有権を有することを証する書類については、収集運搬車両の場合は自動車検査証の写し(電子車検証の場合は自動車検査証記録事項の写し)、積替保管施設の場合は登記事項証明書等になります。
所有権を有していない場合は、使用権を有することが確認できる書類でも差し支えありません。
収集運搬車両の場合で、車検証の所有者がリース会社で使用者が申請者になっていることはよくあるケースで、この場合の車検証は申請者が使用権を有しているので問題ありません。
たまにあるケースが、申請者が法人で、車検証の所有者・使用者がともにその法人の代表者個人になっている場合があります。
この場合は申請者である法人が使用権を有しているとは認められませんので、代表者個人が申請者である法人に使用権を与えている書類が必要となります。
具体的には「車両使用承諾書」、「車両賃貸借契約書」、「車両使用貸借契約書」等を作成し、両者の記名・押印があれば使用権を有する書類として認められます。
積替・保管施設の所有権を有する書類としては、土地・建物の登記事項証明書になります。
土地・建物が貸借物件の場合は賃貸借契約書又は使用貸借契約書等で、申請者の所有権・使用権がわかる書類が必要となります。
当該事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類
「当該事業を行うに足りる技術的能力」とは、産業廃棄物収集運搬業を的確に行うために必要とされる知識や技能のことであり、この知識や技能があることを説明する書類とは、
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センターが主催する「産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」の収集・運搬過程を受講し、その後に行われる試験に合格して交付される「修了証」のことを指しております。
詳しくは「1.講習会を受講して修了証の取得」のページをご参照ください。
当該事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類
「当該事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法」とは、産業廃棄物収集運搬事業を開始するに当たり、その開業資金の総額、またその開業資金は自己資金で行うのか、あるいは借入金等により調達するのかを記載した書類になります。
具体的には、規則様式第6号の2・第8面の書式を用いて作成した書類となります。詳しくは、「3.許可申請書の作成 その3」のページをご参照ください。
定款又は寄付行為
定款は、その会社の憲法ともいうべき書類で、会社設立時に決定した商号、事業目的、本店所在地、設立時資本金等の記載をはじめ、会社の基本的ルールを定め、公証役場にて認証を受けた書類です。
寄付行為とは、財団法人を設立する際に同法人の根本的な規則を定めた、いわゆる一般財団法人等の定款に相当するものとなります。
この書類から確認される事項として、
①事業目的に産業廃棄物処理業の記載があるか
②商号、本店所在地は申請書の名称・住所と一致しているか
③取締役の任期
④事業年度
などが挙げられます。
後に説明しますが、履歴事項全部証明書(会社謄本)や決算書との整合性についての確認となります。
また、原始定款から変更がある場合でその内容が添付する定款に反映されていない場合、定款変更が承認されたことがわかる株主総会議事録等の写しの添付が必要となります。
登記事項証明書
登記事項証明書とは商業登記簿謄本のことを指しており、商業登記簿謄本には「現在事項全部証明書」と「履歴事項全部証明書」の2種類があり、産業廃棄物収集運搬業許可申請書の添付書類として求められている登記事項証明書は「履歴事項全部証明書」になります。
「履歴事項全部証明書」とは、現に効力を有する登記事項、取締役等の就任の年月日、会社の商号及び本店の登記変更に係る事項で、過去3年ほど前までに抹消された事項等まで記載されており、誰でも取得することができる書類です。
「現在事項全部証明書」とは、抹消された事項等が記載されていない、現に効力を有する登記事項のみが記載された書類であり、役員の就退任の履歴等が確認できないため、添付書類としては認められません。
この書類から確認される事項として
①定款と履歴事項全部証明書の記載事項の整合性(名称、事業目的、本店所在地等)
②申請書と履歴事項全部証明書に記載された発行済み株式総数との整合性
③申請書、決算書と履歴事項全部証明書に記載された資本金額との整合性
④申請書と履歴事項全部証明書に記載された役員等との整合性
⑤定款記載の役員の任期と履歴事項全部証明書に記載された役員の就退任・重任登記の整合性
などが挙げられます。
登記事項証明書の添付が必要な場合は、以下のとおりです。
登記事項証明書の添付が必要となる場合
- 申請者が法人の場合、申請者の登記事項証明書
- 申請者が法人の場合、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する法人株主の登記事項証明書
履歴事項全部証明書を取得するには、最寄りの法務局に出向いて取得するか、あるいは郵送にて請求することも可能です。
また、登記・供託オンライン申請システムのウェブサイトから取得することが可能です(事前登録が必要)。
なお申請書に添付する履歴事項全部証明書は、申請日時点で取得した日(交付日)から3か月以内のものの添付が必要となります。
申請者の住民票
住民票は、申請者(個人、法人の取締役、監査役等の役員、政令使用人、株主等)が欠格要件に該当するか否かを確認するために必要とされる書類です。
住民票の添付が必要となる対象者は以下のとおりです。
住民票の添付が必要な対象者
- 申請者本人(個人の場合)
- 法人の取締役、監査役等の役員(法人の場合)
- 廃棄物処理法施行令第6条の10で定める使用人(使用人を置く場合)
- 発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主等(個人株主の場合)
- 申請者の法定代理人(申請者が未成年者の場合)
住民票は申請者が住民登録を行った住所地を管轄する市区町村役場に出向いて取得するか、あるいは郵送にて取得することも可能です。
申請書に添付する住民票は、申請日時点で発行から3か月以内のもので、本籍地が記載されたものが必要となります。
なお、株主等や法定代理人が法人の場合は、住民票の代わりに前述した「履歴事項全部証明書」の添付が必要となります。
住所変更にご注意
申請書の添付書類として住民票を取得した後、申請日までに転居等の理由から住民票登録地の変更や、婚姻等により姓や本籍の変更等が生じた場合は、住民票の有効期限内であっても申請日時点の住民票を取得し直し、申請書の補正を求められますのでご注意ください。
登記されていないことの証明書
「登記されていないことの証明書」とは、あまり聞きなれない書類ですが、精神上の障害等が原因で、物事を自分で判断することが困難になった人に対し、その程度によって家庭裁判所から後見開始(成年被後見人)、保佐開始(被保佐人)、補助開始(被補助人)の審判を受けたことを証する書類になります。
これらの審判を受けた人は「制限行為能力者」となり、単独で法律行為を行うことが制限されます。
廃棄物処理法では、申請者(個人、法人の取締役、監査役等の役員、政令使用人、株主等)が成年被後見人、被保佐人の審判を受けている場合は欠格要件に該当し、許可を取得することができませんでしたが、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が令和元年6月14日に公布されたことを受け、廃棄物処理法及び同法施行規則が改正され、令和元年12月14日からこの要件が「心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定める者」へと改正されました。
それにより廃棄物処理法では、「登記されていないことの証明書」の添付は要しないことになりましたが、多くの自治体では「心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定める者」かどうかを判断するために、「登記されていないことの証明書」の添付を求めている場合が多いです(本書記載日現在においては、首都圏では神奈川県と埼玉県が「登記されていないことの証明書」の添付を不要としております)。
「登記されていないことの証明書」の提出が必要な対象者は、前述した「申請者の住民票」で記載した対象者と同じになります。
登記されていないことの証明書は、東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課でのみ取得することが可能で、支局・出張所では取り扱っていないので注意が必要です。また、郵送でも請求が可能です。
直近3年分の決算書
廃棄物処理法では、「産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」を申請者の能力に係る基準の一つとして定めており、その経理的基礎を確認するため、申請者が法人である場合は、直近3年の各事業年度における決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表)の添付を、申請者が個人である場合は、資産に関する調書ならびに直近3年の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類の添付を義務付けております。
資産に関する調書については、規則様式第6号の2・第9面を用いて作成します。詳しくは「3.許可申請書の作成 その3」の資産に関する調書のページをご参照ください。
会社を設立してまだ1期目の事業年度を終えていない法人の場合は、決算書の提出に代えて開始貸借対照表(例えば、事業開始時に手持ち現金を出資して会社を設立した場合は、資本金と現預金のみの貸借対照表)の添付だけを求める自治体や、申請月直近の残高試算表の添付を求める自治体もあり、それぞれの許可権者によって要求される書類が様々ですので注意が必要です。
債務超過等の場合
直近決算期における貸借対照表において債務超過(負債の総額が資産の総額を上回る状態)等の場合、許可権者によっては経理的基礎を有することを確認するために、追加で提出を求める書類があります。
○東京都の場合
返済不要な負債の総額が債務超過額以上の場合 → 返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類、及び借入金・支払利子の内訳書
返済不要な負債の総額が債務超過額以上の場合 → 経理的基礎を有することの説明書
※「経理的基礎を有することの説明書」は、中小企業診断士、公認会計士又は税理士の有資格者により作成されたもので、その作成者の資格を証明する書類の写しも必要となります。
○千葉県の場合
直近の事業年度末の繰越利益剰余金がマイナスの場合 → 3期分の収支計画書
○埼玉県の場合
直近決算期の貸借対照表において債務超過の場合 → 財務実績計画書
3年分決算を通算した経常損益における経常損失(赤字)の場合 → 財務実績計画書+財務診断書
※「財務診断書」は、中小企業診断士又は公認会計士の有資格者により作成されたもので、その作成者の資格を証明する書類の写しも必要となります。
法人税の納税証明書または所得税の納税証明書
前述した決算書に基づき計算された法人税に未納がないことを確認するため、申請日前3ヵ月以内に発行された「法人税の納税証明書(その1.納税額等証明用)」の添付を義務付けております。
決算書の添付を3期分求めているのと同様に、その決算書に応じた法人税の納税証明書も直近3年分の添付が必要となります。
申請者が個人の場合は、申請日前3ヵ月以内に発行された直近3年分の「申告所得税の納税証明書(その1.納税額等証明用)」の添付が必要となります。
法人税の納税証明書および所得税の納税証明書は、申請者の所在地を管轄する国税の税務署に出向いて取得するか、郵送による請求、あるいはe-Tax(インターネット上の国税電子申告・納税システム)を利用してWeb上で請求し、税務署の窓口で受け取る方法があります。
欠格要件に該当しないことを誓約する書面
欠格要件に該当しないことを誓約する書面とは、法第14条第5項で規定する欠格要件に該当しないことを誓約する書面のことであり、これは規則様式第6号の2・第10面の「誓約書」になります。欠格要件の詳しい内容については、「欠格要件」のページをご参照ください。
この誓約書で欠格要件に該当していないものとは以下のとおりです。
欠格要件に該当していないものとは
- 申請者本人(個人・法人)
- 申請者の役員(法人の場合)
- 申請者の使用人
- 申請者の発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主(法人の場合)