産業廃棄物保管基準

産業廃棄物の保管には、保管後の取扱いに応じた保管基準や、排出事業者において保管する保管基準等が定められております。ここではそれぞれの保管基準について詳しく見ていきたいと思います。

1.産業廃棄物の積替えのための保管基準

産業廃棄物の積替えのための保管とは、産業廃棄物の収集運搬過程において、積替えをする場合の保管のことを指しております(積替え保管)。
なお、産業廃棄物の収集運搬における保管は、積替えを行う場合を除き行うことはできませんので注意が必要です。

・保管要件

囲いの設置

産業廃棄物を保管する場所の周囲に、囲いを設置する必要があります。保管する産業廃棄物の荷重が直接囲いにかかる構造である場合は、荷重に対して構造耐力上安全であるものが求められます。

廃掃法では、構造耐力上の基準は具体的に定められておりませんが、自治体によっては構造耐力上安全であることの裏付けとして、構造計算書まで求める場合もあります。

掲示板の設置

産業廃棄物の保管場所の見やすいところに、産業廃棄物の積替えのための保管の場所であることがわかる掲示板を設置する必要があります。掲示板には、その他産業廃棄物の保管に関する必要な事項を記載する必要があります。具体的には以下の内容となります。
①保管する産業廃棄物の種類
※石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨。

②保管の場所の管理者の氏名又は名称及び連絡先

③屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合は、保管する高さ。

④保管することができる産業廃棄物の数量(積替えのための保管上限)

※掲示板の例

生活環境等への保全措置

産業廃棄物を保管する場所において、産業廃棄物が飛散・流出するのを防止するための措置、地下浸透を防止する措置、悪臭発散防止措置等を講じなければなりません。
①産業廃棄物の保管に伴い汚水が発生するおそれがある場合は、汚水が公共水域および地下水の汚染を防止するため、排水溝の設置や床面をコンクリート等の不浸透材料で覆う。

②屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合は、積み上げられた産業廃棄物の高さが環境省令で定める高さを超えないように保管する(下図ご参照)。

③保管の場所には、ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないように、業務終了後における日々の清掃を行い、保管場所の清潔さを保つとともに、万が一に備えて殺虫剤等を常備しておくことが望ましいです。

④保管量の上限としては、保管場所における1日あたりの平均的な搬出量の7日分に相当する量が上限となります。つまり保管場所における最大保管量が、1日あたりの平均的な搬出量の7日分以上の保管容量があったとしても、1日あたりの平均的な搬出量の7日分に相当する量を超えて保管しないようにする必要があります。条文では「超えないようにすること」となっており、「超えてはならないこと」と強く禁止していないことから、努力規定としての意味合いが強いものと思われます。

⑤石綿含有産業廃棄物または水銀使用製品産業廃棄物を保管する場合には、石綿含有産業廃棄物又は水銀使用製品産業廃棄物が、破砕による石綿の飛散や破損による水銀の大気放出を防止するため、その他の産業廃棄物等と混合しないように仕切りや覆いを設けたり、または専用容器に保管するなどの措置が必要となります。

2.産業廃棄物の処分のための保管基準

産業廃棄物の処分のための保管基準とは、産業廃棄物の積替えのための保管とほぼ同じ基準となっておりますが、保管量の上限と掲示板については以下のとおりです。

①処分等のための保管量の上限としては、処分する産業廃棄物処理施設の1日あたりの処理能力に相当する数量の14日分に相当する量が上限となります。ただし、環境省令で定める場合にあっては、環境省令で定める数量が処分等のための保管上限となります。

②掲示板については、以下の掲示板の例をご参照ください。

※掲示板の例

3.排出事業者における保管基準

産業廃棄物の排出事業者における保管基準とは、排出事業者が排出事業場においてその産業廃棄物が運搬されるまでの間に保管する基準を定めたものです。
排出事業者における産業廃棄物の保管基準も、産業廃棄物の積替えのための保管基準とほぼ同じとなっておりますが、保管量に関する規定がないため、掲示板に記載する内容は以下のとおりです。

※掲示板の例

4.届出を要する産業廃棄物の保管

以下に該当する産業廃棄物の保管を行う場合は、非常災害のために必要な応急措置として行う場合等を除き、都道府県知事等へ事前の届出が必要となります。

届出を要する産業廃棄物の保管

  • 建設工事に伴い生ずる産業廃棄物
  • 産業廃棄物の排出事業場の外において、排出事業者が自ら保管する場合
  • 保管場所の面積が300平方メートル以上の場合

届出を要する産業廃棄物の保管についても、前述した産業廃棄物の保管基準が適用され、掲示板の設置も必要となります。

産業廃棄物の保管の届出には、以下に掲げる内容を記載した、環境省令様式第二号の四による「産業廃棄物事業場外保管届出書」を提出します。

産業廃棄物事業場外保管届出書記載内容

①氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

②保管場所の所在地

③保管場所の面積

④保管する産業廃棄物の種類

⑤積替えのための保管上限又は処分等のための保管上限

⑥屋外において容器を用いずに保管する場合にあっては、その旨および保管する高さのうち最高のもの

⑦保管の開始年月日

産業廃棄物事業場外保管届出書には、以下の書類及び図面の添付が必要となります。

産業廃棄物事業場外保管届出書 添付書類

  • 保管場所の使用権限を有することを証明する書類
  • 保管場所の平面図および付近の見取図

まとめ

産業廃棄物を保管する場合は、産業廃棄物の保管量の多い少ないにかかわらず、産業廃棄物の保管基準に従い適法に保管を行いましょう。