優良産廃処理業者認定制度
優良産廃処理業者認定制度の目的
優良産廃処理業者認定制度とは、優良な産業廃棄物処理業者に対し、一般の産業廃棄物処理業者よりも様々な優位性(メリット)を与え、排出事業者が優良な産業廃棄物処理業者を選択しやすい環境を整えることによって、産業廃棄物処理業全体の優良化を図り、産業廃棄物がより適正に処理される状況を積極的に作り出すことを目的として、平成23年4月1日施行の廃棄物処理法改正に合わせて創設されました。
優良産廃処理業者認定制度の概要
優良産廃処理業者とは、①遵法性、②事業の透明性、③環境配慮の取組の実施、④電子マニフェストの利用、⑤財務体質の健全性の5つの基準に適合する、優れた能力と実績を有する産業廃棄物処理業者を、都道府県知事・政令市長等が認定し、認定を受けた産業廃棄物処理業者については、通常5年の産業廃棄物処理業の許可の有効期間を7年とするなどの特例が与えられます。では、その5つの基準について詳しく見ていきます。
優良産廃処理業者の5つの基準
1.遵法性に係る基準
遵法性に係る基準に適合していることを証明するためには、5年以上産業廃棄物処理業を営んでいる実績があり、優良認定の申請の際に、受けている産業廃棄物処理業等の5年の許可の有効期間において、特定不利益処分を受けていないことが求められます。なお、申請者が既に優良認定を受けている場合には、7年の許可の有効期間中に特定不利益処分を受けていないことが必要となります。
特定不利益処分
特定不利益処分とは、次に掲げる不利益処分のことを言います。
・廃棄物処理業に係る事業停止命令
・廃棄物処理施設に係る改善・使用停止命令
・廃棄物処理施設の設置の許可の取り消し
・再生利用認定の取消し
・広域的処理認定の取消し
・無害化認定の取消し
・二以上の事業者による処理に係る認定の取消し
・廃棄物の不適正処理に係る改善命令
・廃棄物の不適正処理に係る措置命令
2.事業の透明性に係る基準
事業の透明性に係る基準に適合していることを証明するためには、申請者の基礎的な情報、取得した産業廃棄物処理業等の許可の内容、廃棄物処理施設の能力や維持管理状況、産業廃棄物の処理状況等の情報を、一定期間継続してインターネットを利用する方法により公表し、かつ、公表している情報ごとに決められた頻度で更新をしていることが求められます。この場合の「一定期間」とは、通常の場合、優良認定申請を行う前の6か月間のことを指しますが、申請者が既に優良認定を受けている場合、優良認定に係る産業廃棄物処理業等の許可を受けた日から、再度優良認定申請を行う更新許可申請の日までの間(7年)に継続して情報を公表・更新していることが必要となります。
情報の公表は、「インターネットを利用する方法」により行うこととされており、「インターネットを利用する方法」としては、(公財)産業廃棄物処理事業振興財団が運営する「産廃情報ネット」を利用する方法や、申請者自身のホームページを利用する方法などがあります。一方、インターネット上に掲載されていないパンフレットや広報誌など、インターネット以外の媒体による情報公表については、基準適合とは認められませんので注意が必要です。
産廃情報ネットとは?
産廃情報ネットとは、産業廃棄物処理業者が事業の透明性に係る基準の情報作成・公表を無料で行うことができるウェブサイトであり、(公財)産業廃棄物処理事業振興財団が運営してます。産廃情報ネットにより情報を公表・更新している場合には、公表・更新した日付・項目を記した一覧表及び過去の時点の更新したページ部分をプリントアウトすることによって、優良認定の申請書類の1つである、「事業の透明性に係る基準に適合することを証する書類」を、産業廃棄物処理業者が自ら作成できるサービスも設けられてます。(履歴証明サービス)
このほか、産業廃棄物の種類や許可自治体、許可区分等の条件を指定して、全国の産業廃棄物処理業者を検索することができるため、多くの排出事業者が利用してます。産業廃棄物処理業者は集客の機会を増やすためにも、産廃情報ネットに許可情報の詳細等を積極的に登録・公表することが効果的と考えます。
※事業の透明性に係る基準に基づく適合証明サービス
令和2年10月より、事業の透明性に係る基準に適合していることを証する書類として環境大臣が指定する者が作成した書類を提出することができることとされ、(公財)産業廃棄物処理振興財団が環境大臣の指定を受けました。同財団は事業の透明性に係る基準の適合性についての証明書(適合証明書)を発行することができることとなり、この適合証明書を提出することにより、都道府県・政令市による事業の透明性の確認に当たり、インターネットの公表事項の内容確認が不要となり、申請者にとっても都道府県・政令市にとっても大きな負担軽減となります。なお、このサービスを利用するに当たっては、事前に産廃情報ネットへの登録が必要となります。
私も以前申請者として優良認定申請を行った経験がありますが、事業の透明性に係る基準の証明が事業者にとって最も大きな負担とハードルになっていたため、これから優良認定申請をお考えの事業者は、この適合証明書発行サービスを利用することをお勧めいたします。
3.環境配慮の取組の実施に係る基準
環境配慮の取組の実施に係る基準に適合していることを証明するためには、ISO14001又はエコアクション21、若しくはこれと相互認証されている認証制度による認証を受けていることが必要となります。この「これと相互認証されている認証制度による認証を受けていること」とは、地域等における環境マネジメントシステム(以下「地域版EMS」といいます。)及びその地域版EMSの認証を受けた事業者が、一般財団法人持続性推進機構が定める「エコアクション 21 産業廃棄物処理業者の相互認証に関する規程」に基づき、同機構による相互認証を受けている場合も環境配慮の取組の実施に係る基準に適合していることとなります。相互認証されている地域版EMSには、以下の該当があります。
・HES 北海道環境マネジメントシステムスタンダード(北海道)
・みちのくEMS(宮城県)
・M-EMS みえ環境マネジメントシステム(三重県)
これらの認証制度による認証を取得するためには、事業者自身で環境マネジメントシステムを構築し、そのシステムを運営している実績が必要で、通常、認証の取得までに半年から一年、場合によっては数年を要することもあります。まだ環境マネジメントシステムの認証を受けてない事業者で優良認定申請をお考えの場合は、優良認定の申請前から十分な時間的余裕をもって取組に着手することが重要となります。
私も以前申請者の立場で、環境マネジメントシステムの取得を行ったことがあります。その際に、事業者の所在地を管轄する自治体において、環境マネジメントシステム認証取得のためのサポートサービスがあったため、そのサービスを利用して認証取得を行いました。それにより比較的スムーズに認証取得を行うことができましたが、それでも1年近くの時間を要したと記憶しております。1からご自身で環境マネジメントシステムを構築するよりは、同様のサポートサービスを利用することをお勧めいたします。
なお、これらの認証制度による認証は事業所単位で取得するものですが、申請者が一つの都道府県・政令市内に複数の事業所がある場合、このうちいずれかの事業所について認証を取得する必要があり、必ずしも全ての事業所について認証を取得していなければならないというものではありません。
4.電子マニフェストに係る基準
電子マニフェストに係る基準に適合していることを証明するためには、公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センターが運営する電子マニフェストシステム(通称:JWNET)に加入しており、排出事業者から要望があった場合に電子マニフェストの利用が可能であることが必要となります。
加入者の区分には、それぞれ「排出事業者」「収集運搬業者」「処分業者」があり、「処分業者」の加入区分で収集運搬業者としての優良認定申請を行う場合は、電子マニフェストに係る基準を満たしているとはなりませんのでご注意ください。
電子マニフェストシステムへ加入のメリット
①紙マニフェストを使用した場合に課せられる写しの保存義務や、毎年提出が義務付けられているマニフェスト交付等状況報告書の提出が不要となり、事務処理の効率化が図れます。
②データをJWNETが一括管理しているため、データの偽造が行われにくく、産業廃棄物の処理状況が透明化される。
③システムにより自動的に法定記載事項の記載漏れや法定報告期限の到来等がチェックされるため、法令遵守の徹底が図られる。
5.財務体質の健全性に係る基準
財務体質の健全性に係る基準に適合していることを証明するためには、以下の全ての基準に適合している必要があります。
1.自己資本比率
2.経常利益金額等
3.税・保険料
4.維持管理積立金
1.自己資本比率に係る基準
申請者が法人である場合に、直前3年の各事業年度における自己資本比率が0以上であることと、直前3年の各事業年度のうち、いずれかの事業年度における自己資本比率が10%以上であること又は前事業年度における営業利益金額等が0を超える必要があります。
自己資本比率とは、貸借対照表上の純資産の額を、純資産と負債の額の合計額で割って求められた値のことを指します。
自己資本比率 = 純資産の額 ÷ 負債・純資産の額の合計
2.経常利益金額等に係る基準
申請者が法人である場合に、直前3年の各事業年度における経常利益金額等の平均値が0を超える必要があります。
経常利益金額等とは、損益計算書上の経常利益金額に売上原価や販売費および一般管理費に含まれている減価償却費の額を足した額のことを指します。
経常利益金額等 = 経常利益 + 減価償却費
3.税及び保険料の納付に係る基準
産業廃棄物処理業の実施に関連のある税目、社会保険料及び労働保険料について滞納していない必要があります。
産業廃棄物処理業の実施に関連のある税とは、以下の税目です。
・法人税及び消費税(国税)
・都道府県民税、事業税、不動産取得税並びに地方消費税(都道府県税)
・市町村民税・特別区民税、事業所税、固定資産税並びに都市計画税(市町村税)
4.維持管理積立金の積立に係る基準
一般廃棄物最終処分場、特定産業廃棄物最終処分場について積み立てるべき維持管理積立金の積立てをしていることが必要となります。
優良産廃処理業者認定のメリット
メリットその1.許可期限の延長
通常の産業廃棄物処理業の許可期限は許可日から5年間ですが、優良認定を受けた事業者の許可期限は7年となり、通常よりも2年間許可期限が長くなります。
メリットその2.同業他社との差別化ならびに認知度や信用性の向上
優良認定事業者は、許可証の右上に大きく「優良」マークが記載された許可証が交付され、優良認定を受けていない事業者との明確な差別化が図れ、営業活動において他社よりも優位性をアピールできます。
また優良認定事業者は、公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団が運営する「産廃情報ネット」や優良産廃処理業者ナビゲーションシステム「優良さんぱいナビ」に登録・掲載され、排出事業者等に対し広く紹介され、認知度や信用性の向上が期待できます。
メリットその3.申請時の添付書類の一部省略
優良認定事業者については、都道府県・政令市の判断により、産業廃棄物処理業の更新許可申請や、事業範囲の変更許可申請の際に、都道府県・政令市に提出する書類のうち、以下のものについては省略が可能となります。
・事業計画の概要を記載した書類
・直前3年の財務諸表、法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類
・定款および寄付行為
・処分後の産業廃棄物の処理方法を記載した書類(産業廃棄物処分業・特別管理産業廃棄物処分業についての申請時のみ)
メリットその4.財政投融資における優遇
株式会社日本政策金融公庫において、中小企業を対象に産業廃棄物の処理に関連する施設を取得するために必要な資金の融資を行っており、優良認定事業者については、この貸付制度において、通常の場合よりもさらに低利率(中小企業事業:特別利率③、国民生活事業:特別利率C)で融資を受けることが可能となります。
メリットその5.環境配慮契約法に基づき、国等が行う産業廃棄物の処理に係る契約での有利な取り扱い
国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律、通称「環境配慮契約法」に基づき定められた基本方針において、国及び独立行政法人等が取り組むべき環境配慮契約の対象として「産業廃棄物の処理に係る契約」が位置付けられており、国及び独立行政法人等が発注する産業廃棄物処理委託に係る入札において、一定の基準を満たした事業者のみに入札参加資格を与える「裾切方式」が採用されております。
一定の基準とは、産業廃棄物の処理に係る環境配慮契約において、入札参加に必要な資格である
①温室効果ガス等の排出削減に関する取組の状況
②適正な産業廃棄物処理の実施に関する能力及び実績
を評価した結果における基準のことで、このうち適正な産業廃棄物処理の実施に関する能力及び実績の基準は、優良産廃処理業者認定制度の優良基準とほぼ同じとなっており、優良認定業者が国及び独立行政法人等が発注する産業廃棄物処理委託に係る入札において、有利な立場になる仕組みとなっております。
メリットその6.廃プラスチック類の保管上限の引き上げ
近隣諸国において廃プラスチック類の輸入規制が講じられたことにより、国内では行き場を失った廃プラスチック類が増大しました。それにより国内の産業廃棄物処理施設が逼迫し、廃プラスチック類の処理に支障が生じている産業廃棄物処理業者からの要望に対し、優良事業者認定を受けた優良産廃処分業者は、処分又は再生のための廃プラスチック類の保管量を、従来の保管上限の2倍まで認められる措置が講じられました。
※「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」(令和元年9月5日付け環循規発第19090513号)
指定可燃物
廃プラスチック類を3t以上保管する場合は、火災予防条例等の指定可燃物に該当し、所管の消防署への届け出と火災予防のための措置が必要となる場合がありますので注意が必要です。
メリットその7.新型インフルエンザ等まん延時に処理が滞った産業廃棄物の保管上限の引き上げ
優良産廃処理業者における以下の産業廃棄物を処分又は再生処理するための施設において、新型コロナウイルス等による感染者等の影響で施設の稼働停止等を余儀なくされた場合、その産業廃棄物を保管する保管量の上限を、それぞれの処理施設における一日あたりの処理能力に相当する数量の35倍まで拡大する措置が設けられました。
・汚泥(有機性の汚泥を除く)
・ゴムくず
・金属くず
・ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
・がれき類(建設業に係るものを除く)
・鉱さい
・ばいじん
※「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行及び新型コロナウイルス感染症に係る廃棄物の円滑な処理等について(通知)」(令和2年5月1日付け環循規発第2005011号)