建築基準法第51条ただし書きの許可
(位置の指定)
廃棄物処理施設の設置等に関する許可手続きや規制内容については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」といいます。)の中で規定されており、他法令である建築基準法の規制を受けるのはなぜかと思う方も少なくないと思います。また建築基準法第51条ただし書きの許可手続きは、建築基準法だけでなく都市計画法とも密接な関係にあり、設置する廃棄物処理施設が、廃掃法、建築基準法、都市計画法のそれぞれの要件に当てはまる場合に必要な手続きとなります。
ではなぜ建築基準法の規制を受けるのか、詳しく見ていきたいと思います。
建築基準法第51条とは
建築基準法第51条に記載されている条文は、以下のとおりです。
建築基準法第51条
(卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置)
都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会(その敷地の位置を都市計画に定めるべき者が市町村であり、かつ、その敷地が所在する市町村に市町村都市計画審議会が置かれている場合にあつては、当該市町村都市計画審議会)の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。
まず、都市計画区域内においては、都市計画を決定する際に、その敷地の位置が決定しているものでなければ、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、新築または増築してはならないと規定されております。
この条文には廃棄物処理施設と明記されておりませんが、廃棄物処理施設は「その他政令で定める処理施設」の中で規定されており、その他政令とは、建築基準法施行令第130条の2の2のことを指しております。
建築基準法施行令第130条の2の2
(位置の制限を受ける処理施設)
第130条の2の2 法第51条本文(法第87条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)の政令で定める処理施設は、次に掲げるものとする。
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)第5条第1項のごみ処理施設(ごみ焼却場を除く。)
- 次に掲げる処理施設(工場その他の建築物に附属するもので、当該建築物において生じた廃棄物のみの処理を行うものを除く。以下「産業廃棄物処理施設」という。)
- イ 廃棄物処理法施行令第7条第1号から第13号の2までに掲げる産業廃棄物の処理施設
- ロ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)第3条第14号に掲げる廃油処理施設
廃棄物処理施設の中でも、産業廃棄物処理施設として規制を受ける施設は、同条第2項イで「廃棄物処理法施行令第7条第1号から第13号の2までに掲げる産業廃棄物の処理施設」と規定されており、つまり、産業廃棄物処理施設設置許可を必要とする産業廃棄物処理施設が規制の対象となります。
従いまして都市計画区域内においては、都市計画が決定されたときに産業廃棄物処理施設の敷地の位置が決定していないものは、原則として新築や増築することができないことになります。
そうは言っても、都市計画決定後に都市計画区域内において産業廃棄物処理施設が必要になる場合も当然あり、また産業廃棄物処理施設がないと不法投棄のリスクが高くなることも考えられます。そのような理由から、例外としてただし書き規定が設けられております。
建築基準法第51条ただし書き部分
ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。
例外規定の1つ目は、都市計画区域内に設置する産業廃棄物処理施設が、都市計画審議会の議を経て都市計画上支障がないと認めて許可された場合は、新築または増築することが可能となります。
都市計画審議会
都市計画審議会とは、都道府県または市町村において、都市計画および都市計画区域の指定など、都市計画法に基づく事案について、また、知事の諮問に応じて都市計画に関する事項を調査・審議する機関のことです。都市計画審議会の構成員は、主に学識経験者、議員、行政機関の長や職員などにより構成されており、年に数回開催されることが多いです。
例外規定の2つ目は、政令で定める規模の範囲内に該当する産業廃棄物処理施設の場合は、許可を要せず設置することが可能となります。
政令で定める規模の範囲内とは、建築基準法施行令第130条の2の3第3号で次のように規定されております。
建築基準法施行令第130条の2の3第3号
3 工業地域又は工業専用地域内における産業廃棄物処理施設の用途に供する建築物に係る新築、増築又は用途変更(第6号に該当するものを除く。)
一日当たりの処理能力(増築又は用途変更の場合にあつては、増築又は用途変更後の処理能力)が当該処理施設の種類に応じてそれぞれ次に定める数値以下のもの
- イ 汚泥の脱水施設 30㎥
- ロ 汚泥の乾燥施設(ハに掲げるものを除く。) 20㎥
- ハ 汚泥の天日乾燥施設 120㎥
- ニ 汚泥(ポリ塩化ビフェニル処理物(廃ポリ塩化ビフェニル等(廃棄物処理法施行令第二条の四第五号イに掲げる廃ポリ塩化ビフェニル等をいう。以下この号において同じ。)又はポリ塩化ビフェニル汚染物(同号ロに掲げるポリ塩化ビフェニル汚染物をいう。以下この号において同じ。)を処分するために処理したものをいう。以下この号において同じ。)であるものを除く。)の焼却施設 10㎥
- ホ 廃油の油水分離施設 30㎥
- ヘ 廃油(廃ポリ塩化ビフェニル等を除く。)の焼却施設 4㎥
- ト 廃酸又は廃アルカリの中和施設 60㎥
- チ 廃プラスチック類の破砕施設 6トン
- リ 廃プラスチック類(ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物であるものを除く。)の焼却施設 1トン
- ヌ 廃棄物処理法施行令第二条第二号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。)又はがれき類の破砕施設 100トン
- ル 廃棄物処理法施行令別表第三の三に掲げる物質又はダイオキシン類を含む汚泥のコンクリート固型化施設 4㎥
- ヲ 水銀又はその化合物を含む汚泥のばい焼施設 6㎥
- ワ 汚泥、廃酸又は廃アルカリに含まれるシアン化合物の分解施設 8㎥
- カ 廃ポリ塩化ビフェニル等、ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物の焼却施設 0.2トン
- ヨ 廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ塩化ビフェニル汚染物に塗布され、染み込み、付着し、又は封入されたポリ塩化ビフェニルを含む。)又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設 0.2トン
- タ ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設又は分離施設 0.2トン
- レ 焼却施設(ニ、ヘ、リ及びカに掲げるものを除く。) 6トン
従いまして、都市計画区域内の用途地域が工業地域または工業専用地域において、上記要件に当てはまる産業廃棄物処理施設の設置については、建築基準法第51条ただし書きの許可はなくても、都市計画区域内に設置することが可能となります。
ここでご注意いただきたいのは、政令で定める規模の範囲内の産業廃棄物処理施設であっても、工業地域または工業専用地域でなければ例外規定は適用されませんので、用途地域が準工業地域や市街化調整区域の場合は注意が必要です。
許可基準について
建築基準法第51条ただし書きの許可基準については、許可権者により求められる基準が様々であり、全国統一基準とはなっていないのが実情です。条文にも記載のとおり、「…都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合」とありますので、その敷地の位置が都市計画上支障がないと判断する基準は、その地域の実情に合わせて各許可権者が定めているため、様々です。
以下は、千葉県建築基準法第51条ただし書許可基準の立地基準になります。
千葉県建築基準法第51条ただし書許可基準 第4 立地基準
次に掲げる規定に適合すること。
Ⅰ.敷地の位置
- 工業系用途地域(工業専用地域、工業地域及び準工業地域をいう。以下同じ。)又は用途地域の指定のない区域(市街化調整区域を含む。)内であること。
- 工業系用途地域を除く用途地域が指定されている区域、市街地又は将来市街地になることが予想される区域に近接しないこと。
- 都市計画に既に決定されている道路、公園その他の都市施設(都市計画法第11条に規定する都市施設に限る。)に影響を及ぼさない位置であること。
- 学校、保育所、病院、診療所、図書館、特別養護老人ホームその他のこれらに類する建築物の敷地境界から概ね100メートル以上離れていること。
- 県及び市町村の都市計画構想と齟齬をきたしていないこと。
- 自然公園、自然環境保全地域、近郊緑地保全区域、緑地保全地域、歴史的風土特別保存地区、風致地区等優良な自然環境を保全する必要のある区域及び良好な住宅環境を保全すべき区域が含まれていないこと。
- 災害危険区域、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等災害防止のために保全を図る必要のある区域が含まれていないこと。
- その他知事が不適当と認める位置でないこと。
Ⅱ.搬出入計画
- 主要な搬出入路は、原則として幅員6メートル以上の舗装道路であること。
- 主要な搬出入路は、通学路と重複しないこと。ただし、歩道等が設置され歩行者の安全が確保される場合はこの限りでない。
- 主要な搬出入路は、繁華街や住宅街を経由しないこと。
- 施設の設置に伴って発生集中すると予想される搬出入車両が、主要な搬出入路の交通に過度な影響を与えないこと。
- 敷地の車両出入口は原則として1箇所とし、敷地周辺の交通に影響を及ぼさないよう適切な位置に設置されること。
手続きの流れについて
建築基準法第51条ただし書きの許可は、廃掃法第15条の規定に基づく産業廃棄物処理施設設置許可と同じタイミングで許可を下ろすパターンが多く、お互いの申請から許可が下りるまでの標準処理期間を確認したうえで、申請を行うタイミングを考慮する必要があります。
特に建築基準法第51条ただし書きの許可申請は、申請書を作成して提出するだけではなく、都市計画審議会で諮問されるための資料について、申請窓口である建築指導課等の担当者と共同で作成・摺り合わせを行う必要があり、その資料作成に要する時間も考慮する必要があります。
また、都市計画審議会の開催については、年に3~4回程度の開催となり、都市計画審議会への根回し等の時間を考慮すると、都市計画審議会開催の2カ月前までには都市計画審議会資料を完成させておく必要があります。
従いまして、建築基準法第51条ただし書きの許可を要する産業廃棄物処理施設設置手続きについては、スケジュールの組み立てが大変重要となり、それにより許可までに要する時間も変わってきますので、無理のない範囲で余裕を持った計画を立てることをお勧めいたします。