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許可内容に変更が生じる場合の手続き
許可を取得した後に申請した内容に変更が生じる場合は、変更する前にしなければならない手続きと、変更した後にすればよい手続きがあります。変更する前にしなければならない手続きは、許可証に記載されている「事業の範囲」を変更する場合であり、あらかじめ「産業廃棄物処理業の事業範囲の変更許可申請」を行い、事前に許可を取得した後でなければ変更できません。それ以外の事項で、代表者の変更や本社移転、収集運搬車両の追加等の変更については、変更した後に「産業廃棄物処理業変更届」を提出する事後的な手続きになります。産業廃棄物処理業の事業範囲の変更許可申請と、産業廃棄物処理業変更届について見ていきましょう。
産業廃棄物処理業の事業範囲の変更許可申請
「事業範囲」とは、産業廃棄物収集運搬業の許可証第1面に記載されている「1.事業の範囲」のことを指しており、事業の範囲には、(1)事業の区分と(2)産業廃棄物の種類があります。この事業範囲を変更する場合、例えば事業区分の「積替・保管を除く」から「積替・保管を含む」への変更や、産業廃棄物の種類を追加する場合には、産業廃棄物処理業の事業範囲の変更許可申請(以下「変更許可申請」と言います)を行い、あらかじめ許可を取得する必要があります。
(1)事業の区分の変更
「積替・保管を除く」から「積替・保管を含む」への変更については、産業廃棄物の中間処理施設の設置に準ずる手続きを必要とする自治体がほとんどであり、変更許可申請の前に事前協議等の手続きの中で、立地基準や構造基準の適合状況、他法令の規制の有無等を確認する必要があります。自治体によっては、「積替・保管を含む」の許可に厳しい基準を設けて、よほど正当な理由がない限り許可を認めないところもあります。
(2)産業廃棄物の種類の変更
産業廃棄物の種類(以下「許可品目」と言います)の追加については、許可証に記載のない許可品目を追加する場合や、同じ許可品目でも石綿含有産業廃棄物を含まない許可品目から石綿含有産業廃棄物を含む許可品目の追加、同じ許可品目でも水銀使用製品産業廃棄物を含まない許可品目から水銀使用製品産業廃棄物を含む許可品目を追加する場合にも変更許可申請が必要となります。
なお、既に有している許可品目を廃止する(減らす)場合は、変更許可申請の必要はなく、産業廃棄物処理業の変更届の手続きで足ります。
変更許可申請の手続の流れ
(1)事業の区分の変更の場合
「積替・保管を除く」から「積替・保管を含む」への手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。
- 許可自治体への事前相談
↓ - 事前協議手続き(立地基準・構造基準・他法令確認、住民説明・住民同意の取得など)
↓ - 施設設置の届出
↓ - 施設設置工事
↓ - 使用前検査
↓ - 変更許可申請
上記の手続きの流れをご覧いただいてお分かりの方もいるかとは思いますが、手続きに要する期間は、スムーズに行えたとして、最短でも1年前後は必要となります。
(2)産業廃棄物の種類の変更の場合
産業廃棄物の種類の追加に伴う手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。
- 追加する産業廃棄物の収集・運搬に必要な車両、または容器の確保
↓ - 事業計画の作成(排出事業者の排出場所から処理委託先の処分場の場所、使用車両・容器、数量等)
↓ - 変更許可申請
許可品目の追加に伴う変更許可申請の場合は、新規の産業廃棄物収集運搬業の許可申請手続きと被る部分が多く、変更許可申請から許可までに要する期間は、2~3ヵ月前後となります。
なお、追加する許可品目の排出場所と処理委託先の処分場の場所がそれぞれ異なる都道府県の自治体の場合、それぞれの自治体への変更許可申請が必要となります。
変更許可申請手続きに要する費用
事業の区分に係る変更の場合で事前協議手続きに要する費用は、我々のような専門の行政書士に依頼する場合と、自社の従業員で行う場合で単純に比較することは難しいですが、費用対効果で考えた場合、専門家に依頼したほうが圧倒的にコストパフォーマンスが高いと言えます。ただ、自社内に経験豊富な行政手続き専門の担当者がいる場合は、その担当者で十分であると思われます。
変更許可申請に要する費用は、おおむね以下のとおりです。
法人の場合(1自治体当たり)
- 申請手数料:71,000円
- 履歴事項全部証明書:600円+法人株主数×600円
- 住民票:300円×役員数
- 登記されていないことの証明書:役員数×300円
- 法人税納税証明書(その1):3期分×400円
役員1名の法人で申請した場合、最低でも73,400円の費用が必要となります。
個人の場合(1自治体当たり)
- 申請手数料:71,000円
- 住民票:300円
- 登記されていないことの証明書: 300円
- 申告所得税の納税証明書:3期分×400円
個人で申請した場合、最低でも72,800円の費用が必要となります。
公的書類の取得もオンラインがお得です
履歴事項全部証明書を登記・供託オンライン申請システムというサイトを利用して取得する場合、1通あたり500円で取得することができ、登録した住所へ無料で郵送してくれるため、非常にコストパフォーマンスに優れております。しかも郵送で送付される時間も早く、早ければ翌日にはお手元に届きます。法人税の納税証明書についても、e-Tax(インターネット上の国税電子申告・納税システム)を利用して取得する場合、1事業年度分を370円で取得することが可能です。いずれも事前の登録が必要となります。
産業廃棄物処理業変更届
産業廃棄物処理業の変更届は、変更後に手続きが必要となる事後的手続きです。では、変更届が必要となる場合について見ていきましょう。
産業廃棄物処理業変更届が必要となる場合
- 事業の全部もしくは一部を廃止した時
- 氏名又は名称の変更
- 法定代理人の変更
- 法人の役員および政令で定める使用人の変更
- 発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主、または出資額の100分の5以上の出資者
- 事務所および事業場の所在地の変更
- 収集運搬車両の変更
- 積替保管施設の所在地、面積、積替・保管を行う産業廃棄物の種類、保管の上限、保管の高さの変更
※積替・保管施設の変更については、自治体によって事前協議手続きが必要な場合があります。
上記に掲げる事項に変更が生じた場合、変更の日から10日以内に許可自治体宛に産業廃棄物処理業変更届を提出する必要があります。なお、登記事項に変更があった場合は、変更の日から30日以内に届けることで足ります。
また、変更届を期限内に提出しなかった場合、または変更届を提出しなかった場合、30万円以下の罰金が科される可能性がありますので注意が必要です(廃掃法第30条第2号)。万が一罰金刑が科された場合は欠格要件に該当し、許可が取り消される事態となりかねませんので、変更届だからといって甘く見てはいけません。コンプライアンスの観点からも、変更事項が生じた場合は忘れずに期限内に変更届を提出しましょう。
処理委託契約書の変更も忘れずに
排出事業者と締結する処理委託契約書には、産業廃棄物処理業の許可証の写しの添付が必要とされており、許可証の記載事項に変更が生じた場合は変更前の許可証の写しと差し替えることを忘れずに行いましょう。軽微な変更であれば当事者間の合意により覚書を取り交わすなど、変更の経緯を明確にしておきましょう。
産業廃棄物処理業変更届に要する費用
産業廃棄物処理業変更届は、許可・承認を得るための申請という性質のものではないため、申請手数料は生じません。届出の内容によっては公的書類を添付する必要があり、公的書類の取得費用が変更届に要する主な費用となります。変更内容別に添付が必要な公的書類は以下のとおりです。
なお、単に法人の役員の退任や株主の減少等、減員となる場合は公的書類の添付は必要ありません。
履歴事項全部証明書の添付が必要な変更
- 法人の名称、本社所在地の変更
- 法人の役員(代表者含む)の変更
- 発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する法人株主の変更
- 出資総額の100分の5以上の出資法人の変更
住民票、登記されていないことの証明書の添付が必要な変更
- 個人事業者の住所の変更(住民票のみ)
- 役員、政令使用人の変更
- 発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する個人株主の変更
- 出資総額の100分の5以上の出資者の変更
欠格要件に係る届出
欠格要件に該当するに至った際の変更届は、上記の変更届とは少し異なります。
心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者、およびその業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者以外の欠格要件に該当するに至った場合は、その欠格要件に該当することに至った具体的な事由を記載した届出書を、2週間以内に許可自治体に提出する必要があります。
申請者、法定代理人、法人の役員、政令使用人が心身の故障によりその業務を適切に行うことができなくなった場合は、遅滞なく許可自治体に変更届を提出する必要があります。
※欠格要件の種類・内容については、別途記事でご説明いたします。