目次
廃石綿、石綿含有産業廃棄物
1.石綿とは
石綿(アスベスト)とは繊維状の鉱物の総称で、主にクリソタイル(白石綿)、アクチノライト、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、クロシドライト(青石綿)、トレモライトに分類され、以下の特性に優れております。
石綿の特性
- 繊維状で紡織性がある
- 耐熱性に優れている
- 曲げや引っ張りに強い
- 耐薬品性に優れている
- 熱絶縁性を有している
2.石綿の用途・製品
石綿は極めて細い繊維でできており、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性から、建材や摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されてきました。
国内の石綿消費量のうち、9割以上を建材製品に使用されており、それ以外では主に自動車部品へ使用されており、製品の種類としては少なくとも3,000種類以上と言われております。
建材製品として使用されているものは、主に吹き付け石綿として直接壁、天井、柱、梁等に吹き付けられたほか、波型スレート板やセメント板として床材、壁材、天井材、軒天材、防火壁材等に多く用いられてきました。
3.石綿の人体への有害性について
近年になり石綿には発がん性物質が含まれているということが判明し、石綿を長期間にわたり人体に吸い込むことによって、肺がんや中被種を発症するということが大きな問題になりました。
日本では石綿を吹き付ける作業に従事する労働者の健康被害を防止するという観点から、1975年に石綿を重量の5%を超えて含有する吹き付けが、1995年(平成7年)には重量の1%を超えて含有する吹き付けが原則禁止となり、2005年(平成17年)には重量の1%を超えて含有する吹き付けが完全に禁止となりました。
また2006(平成18年)年には、労働安全衛生法の改正で、石綿が重量の0.1%を超える製品の輸入・製造等が全面的に禁止されました。
4.石綿含有廃棄物等とは
「石綿含有廃棄物等」とは、「廃石綿等」及び「石綿含有廃棄物」のことを指しております。
(1)廃石綿等とは
廃石綿等とは、建築物その他の工作物に用いられた材料等で、具体的には以下のものがあります。
石綿建材除去事業により除去された石綿等
- 石綿
- 石綿保温材、けいそう土保温材、パーライト保温材、これらと同等以上に容易に飛散する恐れのある保温材、断熱材、耐火被覆材
石綿建材除去事業に用いられた用具等
- 廃棄されたプラスチックシート(隔離シート)
- 防じんマスクのフィルタ
- 集じん排気装置に使用したフィルタ
- 特殊保護衣、靴カバー
- 室内掃除用スポンジ
廃石綿は、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして、廃棄物処理法では特別管理産業廃棄物に指定されており、その処理には厳しい基準が設けられております。
(2)石綿含有産業廃棄物とは
石綿含有廃棄物は、石綿含有一般廃棄物と石綿含有産業廃棄物の2種類があり、石綿含有産業廃棄物とは、工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するものです。石綿含有産業廃棄物の具体例としては、以下のものがあります。
石綿含有産業廃棄物の具体例
- 石綿含有成形板(石綿含有スレート(波板、ボード)、石綿含有パーライト板、石綿含有ケイ酸カルシウム板等)
- 石綿含有ビニル床タイル
- 石綿含有仕上塗材
5.処理基準
(1)廃石綿等
廃石綿等は、前述したとおり特別管理産業廃棄物に該当するため、廃棄物処理法では以下の処理基準を満たすことが必要となります。
収集運搬について
①こん包する等、飛散防止措置を取る
具体的には、厚さ0.15mm以上の耐水性のプラスチック袋で二重こん包する等
②他の廃棄物と区分して収集、運搬、積替え、保管を行う
③廃石綿等である旨及び注意事項の表示を行う
処分について
①溶融、無害化処理による処分を行う
②埋立処分を行う場合は、あらかじめ固型化・薬剤による安定化後、耐水性の材料で二重こん包する
③一定の場所で分散しないように埋立処分し、覆土する
(2)石綿含有産業廃棄物
石綿含有産業廃棄物の処理に当たっては、以下の処理基準を満たす必要があります。
収集運搬について
①飛散防止措置をとる(フレコン等の袋を利用するなど)
②破砕することのないように収集、運搬を行う
運搬するためにやむを得ず破砕する場合は、散水等により湿潤化させ、必要最小限度の破砕に抑える
③他の廃棄物と混合しないように区分して収集、運搬、積替え、保管を行う
処分について
①溶融、無害化処理による処分、または埋立処分を行う
②中間処理としての破砕は禁止
③一定の場所で分散しないように埋立処分し、覆土する
6.大気汚染防止法の改正に伴う石綿含有建材への規制拡大について
石綿含有成形板等の不適切な除去により石綿が飛散した事例がみられたことから、建築物等の解体工事等における石綿の飛散を防止する目的で大気汚染防止法が改正され、令和3年4月1日より全ての石綿含有建材に規制対象が拡大されました。
(1)規制内容について
建築物や工作物を解体・改造・補修する際は、事前調査が必要となりました。それに伴い、解体等工事の元請業者等は、工事を行う前に工事を行う対象の建築物等に石綿含有建材が使用されていないか確認し、その結果を作業開始前(届け出対象特定工事の場合は工事開始の14日前まで)に書面で元請業者等から発注者に説明する必要があります。
説明した書面の写しについては、工事終了後3年間保管が必要となります。
・着工前に石綿含有建材使用の有無の事前調査
・調査結果を作業開始前までに書面で発注者へ説明
・調査結果報告書の3年間保管(工事終了後)
(2)事前調査方法について
まず、建築物等の設計図書等により、新築工事に着手した日、建築材料を確認し、使用されている建築材料に石綿が使用されているか否か、石綿(アスベスト)含有建材データベース等を使用した調査を行います。その後、現地で各部屋・部位について、実際に石綿含有建材が使用されていないかどうかを目視で確認します。不明の場合は代表的な試料を現地にて採取し、石綿含有有無の分析を依頼します。
・設計図書、その他書面による調査
・現地での目視による調査
・分析による調査
(3)有資格者による事前調査の義務付け
前述した事前調査については、令和5年10月1日より必要な知識を有する者に実施させる必要があります。
必要な知識を有する者とは、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者等となります。従って、令和5年10月1日以降は、これらの建築物石綿含有建材調査者資格を有する者に事前調査を依頼するか、あるいは自社の従業員等に建築物石綿含有建材調査者の資格を取得させ、自社で事前調査を行うか等の選択が必要となります。
なお、建築物石綿含有建材調査者の資格取得方法については、登録講習機関が実施する講習を受講し修了することにより取得することが可能ですので、自社の従業員に資格を取得させようとお考えの事業者は、早めの資格取得をお勧めいたします。
(4)一定規模以上の工事を行う場合の都道府県等への報告義務
一定規模以上の工事を行う場合は、対象建築物等に石綿が使用されているかいないかに関わらず、事前調査結果を元請業者が都道府県、労働基準監督署へ報告する義務が生じます。一定規模以上の工事とは、
・建築物の解体:対象の床面積が80㎡以上
・建築物の増改築、リフォーム等:請負金額の合計が100万円(消費税込)以上
・工作物の解体、改造、補修等:請負金額が100万円(消費税込)以上
事前調査結果は、原則として「石綿事前調査結果報告システム」を使用して行います。